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急速冷凍で鮮度維持? 冷凍する前後で注意すべきポイント

なぜ「急速冷凍で鮮度維持」といわれるのか?


「食品を急速冷凍すれば、鮮度を維持したまま保存できる」と盛んに言われます。これはどんな理由によるものでしょうか。

「鮮度維持」という言葉が使われる状況を確認すると、冷凍・解凍した食品の食感やうま味、色味などの「おいしさ」が、生で新鮮な状態のものと匹敵していることを指しているようです。この視点から、食品を急速冷凍すると生で新鮮な状態と同じおいしさを維持できるのか否かについて考えていきたいと思います。

急速冷凍だけでは「おいしさ」は維持できない


実は、急速冷凍をするだけでは、食品のおいしさを保つことはできません。

食品を急速冷凍することにより得られる効果は、冷凍した食品内の氷結晶を小さくすることに限られています。氷結晶が小さくなると、食品組織に与えるダメージを抑えることができますが、これだけでは冷凍による食品の変化を防ぐことができないのです。
【関連記事】急速冷凍がポイント!おいしさをキープする冷凍方法

一般的に、冷凍・解凍した食品のおいしさは、「味」「色」「食感」「ドリップの有無」などで判断されます。実はこれらは「急速冷凍により氷結晶を微細にすること」以上に、「冷凍前の準備」「冷凍保存中の保存方法」「解凍・調理方法」に大きく左右されるのです。急速冷凍はあくまで、おいしさをキープするうえでの一要素と考えましょう。
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おいしさ維持のポイント1:冷凍前の素材と調理がおいしさを決める


冷凍保存の基本は「冷凍前のおいしさをそのまま保つ」ことです。まり、冷凍前の素材や調理方法の質がよくなければ、その後いくら急速冷凍機を使っても、厳密に冷凍保存をしても、素晴らしい解凍法を用いても、おいしさは冷凍前より上がらないということです。そのため、冷凍する前の食材は状態のよいものを選び、調理するようにしましょう。

また、その後の冷凍保存・解凍を見越して、適切な調理をしておけば、よりおいしさを保ちやすくなります。たとえば、調理前の肉や魚を冷凍する際には、タレに浸したり、塩や砂糖を振って味付けをしたりしておくと保存性が上がり、おいしさを保ちやすくなります。

食品を焼いたり煮たりして調理しておけば、既に火を通しているため、解凍中に食品が変化する心配がなくなります。解凍する際に厳密な管理をしなくても流水解凍や自然解凍、再加熱で簡単に解凍できるようになるのです。

 

おいしさ維持のポイント2:最適な包装と温度管理で冷凍保存中の乾燥・酸化を防ぐ


鮮度のいい食材を適切に調理し、急速冷凍したあとは、食材が劣化しないように保存する必要があります。この場合にポイントとなるのが、食品の包装と温度管理です。

食品の冷凍保存中に特に注意すべきは、「冷凍焼け」と総称される冷凍品の劣化現象です。
これは食品から水分が蒸発して「乾燥」し、食品パッケージや冷凍庫内の「霜」となり、冷凍品自体が「酸化」するなど化学変化してしまうことを指しています。こうなると、食品の色や食感が悪くなり、味も変化してしまいます。
【関連記事】乾燥しているサイン!冷凍食品の霜・冷凍焼けを防ぐ方法

これらの現象を防ぐには、保存中の食品が空気に触れて乾燥しないように、食品に密着した包装を行うことが必要です。ラップ等で周囲をぴったりと覆う、真空包装機でパウチをする、食品の周囲に氷の膜をつくるグレーズ処理を行う、水に食品を漬けこんで凍らせて氷で覆うなど、さまざまな方法があるので、食材に合った適切な方法を選びましょう。

また、冷凍焼けを防ぐために、保存をする冷凍庫(冷凍ストッカー)の温度を下げておくことも有効です。冷凍庫を開け締めすることによって温度変化が起こると、食品から水分が蒸発しやすくなりますが、冷凍庫全体の温度を下げておくと、扉を開け締めしても、冷凍庫内の温度が変化しづらくなります。

さらに、食品の形状や商品設計上の理由で密着した包装ができない場合には、食材の保存期間を短く設定するとよいでしょう。
食品の周囲にすきまがある状態で長期間保存すると、どうしても霜が発生し、冷凍焼けしやすくなります。その場合は、霜や冷凍焼けが発生しないうちに、解凍・消費してしまえばよいのです。

 

おいしさ維持のポイント3:最適な解凍方法を選ぶ


鮮度のいい食材を急速冷凍し、適切に冷凍保存していた場合に、最後のポイントとなるのが、解凍方法の選択です。

冷凍保存された食材には、解凍の際に温度が上がるにしたがってさまざまな変化が起こります。その代表的なものが「氷結晶の粗大化」と「酵素反応」です。
解凍中に食品の品温が最大氷結晶生成帯と呼ばれるマイナス5~マイナス1℃の温度帯に長く留まると、冷凍された食品内にできた氷結晶が大きくなり、こんにゃくや寒天、豆腐などの食材は組織にダメージが発生してスポンジ化してしまいます。
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また、解凍中に常温温度帯(約10~40℃)に長くさらすと、未加熱の食品は食品内の酵素の反応が活発になり、表面から徐々に色が変わったり、臭いが出たり、保水性が落ちたりしてしまいます。加えて、マイナス温度下の低温でゆっくり解凍すると、冷凍されて凍結濃縮が起こった食品成分中の酵素が、温度が上がるにつれてゆっくりと反応するようになり、少しずつではありますが、酵素反応が起こってしまうことにも注意が必要です。

これら変化をできる限り抑えて解凍することで、食材の冷凍前のおいしさをはじめて維持できるのです。冷凍前の調理方法や食材の性質によって適切な解凍方法は変わりますので、個々の特性を理解したうえで、以下のなかから最適な方法を選びましょう。

代表的な解凍方法
1. 氷水解凍


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2. 冷蔵庫解凍


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3. 流水解凍


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4. 自然解凍


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5. 電子レンジ加熱・加熱調理


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「鮮度」や「おいしさ」維持には冷凍・保存・解凍すべての工程が重要


ここまで述べたように、冷凍を行う食品の「鮮度」つまり「おいしさ」の維持は、決して「急速冷凍」だけで行えるものではありません。冷凍・保存・解凍すべての工程で適切な処理を行うことで初めて達成されるものなのです。

この点を理解しておけば、冷凍食品や冷凍品を製造する際に、適切な処理を行うことができるだけでなく、万一冷凍した食品の品質が悪かった場合には、何が原因であるかを検証し、突き止め、改善することができるでしょう。