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どんな時に発生する? 解凍時の「ドリップ」の正体とは

冷凍された食品を解凍した際に発生する「ドリップ」。ドリップは食品のおいしさが失われた証とされ、食品を選ぶ際の基準の一つになると言われてきました。このドリップにはどのような成分が含まれていて、食品にどのような影響を及ぼすのでしょうか。本記事ではドリップが発生する際の食材の変化について説明すると共に、ドリップを防いで冷凍・保存・解凍する方法を紹介します。

冷凍・解凍をすると食品組織から水分が流れ出る

冷凍品を解凍した際に出る「ドリップ」は、冷凍・解凍することによって食品にダメージが加わり、組織の保水能力が失われた結果、食材の水分が流れ出たものです。
 
どんな食品を冷凍するか、どんな状態で冷凍するか、どんな状態で冷凍保存するか、どんな方法で解凍するかに応じて、ドリップの出る量は変わります。
 
以下では、解凍時に発生するドリップについて食品別に紹介していくと共に、ドリップを防ぐ方法についても説明します。

 
 

野菜・果物は冷凍すると細胞膜が破れてドリップが出る

野菜や果物を冷凍すると、その植物細胞の内外に氷結晶ができて細胞膜が破れてしまいます。そのため、組織内の水分を維持する能力が失われてしまい、解凍すると水分がドリップとして流れ出してしまいます。
 
このドリップにはビタミンCやアントシアニンなど、水溶性の成分が溶けだしているため、栄養成分が失われてしまいます。
加えて、水分を失った野菜や果物は、張りを失って肉質が悪くなるため、見た目や食感が悪くなります。
 
ドリップの量を少なく抑えるには、液体窒素などを使って超急速冷凍を行うとよいでしょう。しかしそれでも、細胞膜のほとんどは破れてしまうため、ドリップが全く出ない、冷凍前の見た目や食感を完璧に保つ、といったことは難しいでしょう。
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ただし、野菜や果物のドリップの量は品種によって違いがあります。
マメ類やイモ類、スイートコーン、カボチャなど、デンプンが食品の組織内にみっしりと詰まっている食品は冷凍・解凍を行ってもドリップはほとんど出ません。
 
サヤインゲンやブロッコリーなど、比較的やわらかい野菜でも、繊維質が多いものはドリップが少なくすみます。
 
果実類や葉物野菜は、元々の水分が多いため、急速冷凍を行っても大量のドリップが出てしまいます。

 
 

魚介類・肉類は保存・解凍中にタンパク質が変性してドリップが出る

魚介類や肉類は、細胞の中に水分を含んだ筋肉繊維を持っています。そのため、冷凍をするとその水分が凍り野菜や果物と同様に細胞の内外に氷結晶ができますが、解凍されて氷結晶が水になると細胞が水分を再吸収するため、野菜や果物と比べてドリップが少なくてすみます。
 
魚介類・肉類からドリップが出るのは、冷凍した食品を保存・解凍している最中に食品内の筋肉細胞のタンパク質が変性してしまった場合です。タンパク質が変性してしまうと、筋肉繊維の水分を再吸収する能力が弱くなってしまいます。
水分が細胞に再吸収されなくなってしまうと、ドリップの量が多くなり、ドリップに含まれるうまみ成分や栄養素、水分が流れ出てしまいます。ドリップが出た後の魚や肉はうまみが少なく、食感が悪くなります。
 
これらのことから、魚介類や肉類のドリップの発生を防ぐには、保存・解凍中のタンパク質変性を防ぐ必要があることが分かります。
 
まず、方法の一つとして挙げられるのが、魚や肉のタンパク質変性を起こす酵素を失活させるため、冷凍する前に加熱をしておくことです。そうすれば、冷凍・保存・解凍を経てもドリップが出ることはほとんどなくなります。
 
2つめの方法が、低い温度で保存し、適切な方法で解凍することです。低い温度であれば、保存中に食品が変化しタンパク質が変性することを避けられます。また、常温(10~40℃)の温度帯に長く食品がさらされない氷水解凍や冷蔵庫解凍を行うことで、酵素反応を抑制でき、ドリップを少なく抑えられます。
 
また、魚介類と肉類を比べると、魚介類はドリップが出やすい点に注意が必要です。
魚介類は肉類と比較して、組織に含む水分量が多く、タンパク質も変性しやすい性質を持っています。
そのため、酵素を失活させていない生魚の冷凍を行う際には、氷結晶による細胞へのダメージを防いで、酵素反応をできる限り抑えることが重要です。
冷凍する際には、急速冷凍により氷結晶を小さく保ち、冷凍保存をする際の温度は低く保つほうがよいでしょう。解凍時には氷水解凍を行うことで、氷結晶が大きくなって組織にダメージを与え、酵素反応が活発になることを防ぐようにしましょう。
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マグロやカツオのさくの解凍には要注意

マグロやカツオなどの大型魚の冷凍さくを解凍する際には、ドリップの大量発生に注意が必要です。
 
釣り上げられてすぐに冷凍されたマグロやカツオは、流水などで急速に解凍すると、身が急激に縮んで大量のドリップが出てしまうことがあります。
こうなってしまうと、身は硬くなり、ドリップと共にうまみ成分が大量に流出するので、おいしさが大幅に落ちてしまいます。
 
この現象は、マグロやカツオなどの大型魚が死後硬直前に冷凍されてしまった場合に起こります。大型魚は死後硬直するまでに時間がかかるため、釣り上げてすぐ冷凍すると死後硬直前であることも多いのです。
冷凍をすると死後硬直を起こす成分がそのままマグロやカツオの身に残り、解凍されると同時にその成分が作用し、死後硬直よりも激しい身の収縮が起こります。
 
この身の収縮を防いで解凍するためには、氷水解凍が有効です。
なぜ氷水解凍で身の収縮を防ぐことができるかは、詳細は分かっていません。氷水で解凍することで流水よりも長い時間をかけて解凍を行うと、その間に身の収縮を起こす成分が減少するからではないかと考えられています。
 
時間をかけて解凍する、という点では冷蔵庫解凍も適していますが、冷蔵庫解凍の場合は解凍中にマグロやカツオの組織内の氷結晶が大きくなってしまうため、少し身が柔らかくなってしまう可能性があります。
加えて、冷蔵庫のような低温の環境でも酵素反応は少しずつ起こります。冷凍されることで凍結濃縮を起こした食品組織のなかでは、酵素の濃度も上がっており、酵素反応が起こりやすくなっています。時間がかかるぶん、酵素反応が進んでしまうこともあるので、冷凍前の状態の品質を保ちたい場合は、短時間で解凍したほうがよいでしょう。
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また、マグロやカツオなどの大型魚以外の場合は、釣り上げてすぐに死後硬直が始まるため、多くが死後硬直後に冷凍されています。このため、流水などで急速解凍を行っても大量のドリップがでる心配はありません。

 
 

ドリップが出る条件は食品によって違う

このように、ドリップが出る条件は食品それぞれの特性や冷凍した状況によってさまざまです。
ドリップが出てしまうと、食品から水分が失われるだけでなく、栄養素やうまみ成分も失われてしまいます。
 
食材それぞれの特性に合った適切な冷凍・保存・解凍方法を選択することによって、ドリップを防ぎ、冷凍された食品をおいしく食べられるようにしましょう。

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