【ものづくり補助金】事業計画書 書き方のポイント解説
ものづくり補助金の事業計画を書く際には、平易で簡潔に、数字の根拠をもって、図表をふんだんに使い、該当事業が収益を上げることをわかりやすく説明すべしと言われます。
ここまでであれば、ある程度書類作成やパワーポイント制作に慣れている方であれば、必要項目を埋めれば作れるだろうとお思いになるかもしれません。
しかし、作り上げた事業計画書を支援機関やコンサルタントに見せてみると、猛烈なダメ出しが返ってきます。ものづくり補助金の審査をするのは中小企業診断士を中心とした外部有識者。その有識者の年齢は高齢の方から若い方までバラバラです。つまり、中小企業診断士の業界特有のロジックに対応し、高齢士業の方が審査にあたった場合の配慮なくして合格点を獲得はできないということです。
本記事では、当社が書類作成において実際に関係者から受けた指摘の内容も参考にしながら「採択されるものづくり補助金事業計画書」に近づくための書き方について解説していきます。
ものづくり補助金の概要や申請書の入手方法、書き方がわからないときの対処方法、相談先などについてはこちらの記事をご覧ください。
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1.書き方のポイント
①図表をふんだんに使用する
ものづくり補助金の審査においては、審査員は数多くの案件をかけ持つため、審査時間は数十分程度しかかけられないと言われています。審査書類はワード出力で10枚程度。
各書類にはびっしり情報が入っており、読み解くのは大変です。 さらに申請される事業は多岐にわたるため、審査員は申請者と違ってその分野に通じているわけではありません。内容が複雑であれば理解は困難を極めます。そのため、事業計画書にはふんだんに写真や図、表を挿入することで審査員の理解を助ける必要があります。 食品分野であれば、商品である食品、店舗や売り場、製造工場の写真があればイメージがつきやすくなります。
文章で説明している箇所についても、可能な限り概念図で示したほうがよいと言われます。以前、自社の申請をする際に「文章のほうが簡潔にできるから」と文章と箇条書きで作成した箇所についても「図で示してください」と注意されたことがありました。あくまで指摘をした方の私見ではありますが、審査員は多くの書類に目を通すため、あまり文章を読みたがらないそうです。
パワーポイントを作るつもりでまずは概念図、フロー図、比較表などをとにかく作ってみて、それに文章を添えるくらいのつもりで作成したほうがよいのかもしれません。 ただし、事業計画書はA4のフォーマットに入力します。図表を入れすぎると、ページ送りの関係上大きな空白ができてしまって目安のページ数の10ページを超えてしまいますので、図表の作りすぎにも注意が必要です。
②数値を使って客観的・定量的な内容に仕上げる
ものづくり補助金の事業計画は3~5年の事業計画で「付加価値額が年3%以上向上、給与支給総額が年+1.5%以上向上、事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高い」を達成するものではなければなりません。
この数値は公募における要件にもなっています。審査員は事業計画について、この数値が実現可能性かという視点で事業計画の数値を見ています。 ものづくり補助金の主体となっている中小企業庁の示す付加価値額とは、「 営業純利益(営業利益-支払利息等)+給与総額{役員給与+従業員給与(含む賞与)}+福利厚生費+動産・不動産賃借料+支払利息等+租税公課」のことを指します。
要は雇用や設備投資を増やすことがプラスに評価されるということです。そのうえで計上利益を増やしていく計画を作ることが必要なのです。 そのため、食品製造業であれば、以下のような指標を用いつつ、補助金を使って設備投資をすることで「売上高を●円増やす」「雇用を●人増やす」ということを主張していくとよいでしょう。
・商品の販売価格
・材料費の●%減
・効率性●%アップ
・製造量の●%アップ
・歩留まりの●%減少
・付加価値による単価の●円上昇
・販売量の●個増加(設備投資を実現することで既に引き合いがあることを示す)
③若年層・女性特有の商品・サービスには丁寧な解説をつける
食品関連の事業でものづくり補助金に応募する場合は、新たに開拓する市場として若者や女性をターゲットにすることも多いかと思います。その場合は、審査員に「本当にこの商品やこのサービスは売れるの?」とニーズに対する疑問を持たせないようにする工夫が必要です。
以前弊社でも、女性向けの商品について事業計画書を作成したところ、男性の中小企業診断士から「本当にこれは需要があるのですか?」と聞かれたことがありました。商品は世の成人女性であればほぼすべての方が認知しているようなグッズだったのですが、男性は普段使わないものなので、その方はまったくご存知でなかったようです。
結果、弊社では該当商品についてのアンケート結果を引用したり、使用シーンについての解説を付けたりすることで、ニーズについての説得力を担保しました。とはいっても、文章を長くしないという観点から、長々と説明することもできません。簡潔にその必要性が分かる程度の加筆で必要性を証明するようにしましょう。
審査員となる中小企業士の方々は約97%が男性で、約85%が40代以上です。60代以上の方も約30%いらっしゃいます(中小企業診断協会アンケートより)。若者に親和性がある文化や最新テクノロジー、女性が主に購買する商品やサービスについて、親しんでいない方も多くいらっしゃるでしょう。
そのような方々が審査するということを念頭において、説明文が不親切になっていないか検証することが必要です。
2.各項目の書き方
2021年のものづくり補助金公募要領では、以下の「その1」~「その3」までの資料を作成し、PDF形式のファイルを添付するように求めています。
・その2:将来の展望(事業化に向けて想定している市場及び期待される効果)
・その3:会社全体の事業計画
公募要領の簡略化で詳細は省かれてしまいましたが、書くべき内容はほぼ2019年以前の公募で指定されていた内容と同様でよいと思われます。
2019年のものづくり補助金公募要領で求められていた記載内容は以下のとおりです。
・補助事業で機械装置等を取得しなければならない必要性
・課題解決のために不可欠な工程ごとの開発内容・材料・機械装置等
・具体的な目標及びその具体的な達成手段
・スケジュール(機械装置等の取得時期、技術の導入時期など)
・事業計画と法律・ガイドラインの関連性
・他社との差別化・競争力強化のための方法や仕組み
・実施体制
・ユーザー、マーケット、市場規模
・成果事業化見込み
ここでは各項目についてどのような内容を書くべきか、一つずつ解説していきます。
①今までの自社での取り組みの経緯・内容の書き方
この項目では自社の業態や特色、強みや現状を審査員に知ってもらう必要があります。直接的には評価につながりにくい項目ではありますが、審査員はこの内容を踏まえて事業計画書全体を評価するということは忘れてはなりません。
この後の記載内容をよく理解してもらうために、簡潔に、具体的に説明しましょう。
また、可能ならば自社の施設や売り場、商品などの写真も使って、審査員が業務についてイメージをしやすいようにしましょう。
・会社の来歴(創業年、経営者の変遷、事業所や支店の立地、創業からこれまでの経緯)
・経営状況(売上、経常利益、経営状況についての補足)
・社内体制(従業員数と雇用形態、その大まかな配置)
・自社の強みとなる技術や看板商品など
・顧客や取引先の特徴
また、審査においては地域経済と雇用の支援につながることが重視されていますので、地域とつながりが深い事業の場合はその旨もしっかり説明しておきましょう。
②補助事業で機械装置等を取得しなければならない必要性の書き方
このポイントで求められているものは、自社が抱える課題とその解決方法、そして解決のために用いる導入設備の紹介です。
基本的には「この課題を革新的な手法で解決するためにはこの機械装置が不可欠である」という文脈で説明しましょう。
たとえば、食品製造における冷凍関連設備の導入で典型的なものは以下のとおりです。
取引先から月ごとのまとまった量の納品を要望されているが、実現するには通年において安定した価格・品質で特定の原料の調達を達成する必要がある。
【解決手法】
原料を急速冷凍することにより、通年で品質と価格が安定した原料調達を可能にする。これにより自社の強みを生かした商品の通年提供を可能にする。
【解決手法についての技術的課題】
原料〇〇の特性を損なわないためには、□□の手法を用いての冷凍が必要であり、この手法は商品△△を販売するこの商圏では一般的ではない。この手法により原料〇〇の保管と商品△△の大量生産が実現すれば、自社の〇〇加工の技術を安定して提供し、現在の顧客のニーズを満たすことなるうえ、他社との差別化が可能になるため、より一層の新規顧客獲得も実現することになる。
【導入設備】
上記の冷凍手法を実現するためには、この特性をもつ冷凍機材が必要であり、☆☆の理由からこの機材が適当であると考える。
③課題解決のために不可欠な工程ごとの開発内容・材料・機械装置等の書き方
このポイントでは、課題解決を行う工程について具体的に説明していく必要があります。食品製造業であれば、課題を解決したい製造工程について詳しく説明をしていきましょう。
その際の表現方法についてですが、製造工程はできる限り図で表現します。製造工程や製造技術についての詳細は、分野外の人にはわかりにくいものです。また、文章で詳細に表現すると膨大な量になりがちです。フロー図や、工場内部の導線図などを用いて、導入設備を使うポイントや設置場所などを具体的にかつわかりやすく説明し、実現性や革新性に説得力をもたせましょう。
④具体的な目標及びその具体的な達成手段の書き方
審査員やものづくり補助金の事務局に課題の解決をアピールするのであれば、後日評価を行う担当者が「課題の解決が達成した」と判断を行う基準をわかりやすく示さなければなりません。
この基準についてはできる限り数値で示すようにしましょう。
・原料仕入れ量●%アップ
・生産量●%アップ
・作業時間●%減少
・賞味期間の●か月伸長
また、目標の数値を設定した際には、どう検証するかを念頭に置くことが必要です。検証方法について、一般的にわかりにくいと感じられる場合は説明を添えましょう。
この目標についての説明は、「課題」「解決策」「導入機材」「目標・効果」や「設備」「期待効果」「目標」「検証方法」などの軸で表に整理し、一目でわかりやすいように示すとよいでしょう。
なお、目標の設定において「人件費の削減」を掲げるのは避けましょう。ものづくり補助金の審査においては地域経済と雇用の支援につながることが重視されています。人件費の削減はその点から逆行することになってしまいます。むしろ、需要を増やすことで雇用を増やしていくことを目標に掲げるとよいでしょう。
⑤スケジュール(機械装置等の取得時期、技術の導入時期など)の書き方
スケジュールについては、長々と説明する必要はありません。エクセルでプロジェクトスケジュール表を作成し、事業計画書に添付しましょう。
事業実施期間に必要な工程がすべて完了するスケジュールになっているかが確認されますので、重要工程を書き出して期間内に完了するようにしてください。
プロジェクトスケジュール表のイメージ
⑥事業計画と法律・ガイドラインの関連性の書き方
この点に関しては、食品製造業で冷凍関連設備を導入する場合であれば、中小ものづくり高度化法の「4 製造環境に係る技術」「11 バイオに係る技術」のいずれかにあてはまることがほとんどかと思います。
中小ものづくり高度化法12分野との関連性
本事業の新技術導入による取り組みは、特定ものづくり基盤技術の中で「4 製造環境に係る技術」に該当する。具体的には以下のような高度化に取り組む。
書き方がわからない方は、上記のテンプレートで書き出し(「」内は該当するものに差し替えます)、以下のポイントについて自社の課題解決手法に関連する項目を選び出して、説明しましょう。
・最適な流通手法の確立
・最適な保存方法の確立
・高品質・高付加価値の付与
・生産から販売に至る当該技術の向上
※上記は「4 製造環境に係る技術」に関するものです
中小ものづくり高度化法の詳細については、以下のリンクをご参照ください。
中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針
⑦他社との差別化・競争力強化のための方法や仕組みの書き方
この点は書き手の力量が試されるところかと思います。統計や資料をできる限り引用して、可能ならば数値を用いて、課題解決をすることによって差別化や競争力強化ができることを証明していきましょう。
食品製造業であれば、切り口の一例として以下のようなものが考えられます。
・価格面
・品質面
・納期
・賞味期限
・衛生管理
・独自の製法
・使用原料
他社はどういった現状であるか、自社で取り組む手法はいかに模倣しづらいかなど、自社の強みとも関連させつつ端的に紹介しましょう。ここでも、取り組みの座組や連携体制、技術の活かし方などについて図表で示すことができればわかりやすくなります。
⑧実施体制の書き方
課題解決手法を実施するための社内体制について説明する項目です。このポイントについては、プロジェクト体制図で示すことで端的に、人員が十分に確保できていることや、社内の連携がスムーズに実施できることを示しましょう。
図の下部には担当者に十分なスキルがあることを示すために、要点となる担当社員については社歴やスキル、これまでの担当業務について簡単な解説をつけましょう。
プロジェクト体制図のイメージ
⑨ユーザー、マーケット、市場規模の書き方
「⑦他社との差別化・競争力強化のための方法や仕組み」と同様、決まった書き方はありません。具体的には自社の取引先やユーザーについて、全体像としてはマーケット、市場規模について、統計や資料を用いて記載していきます。
取り扱う商材や業界の統計資料がない場合は、地域の店舗数などをGoogle検索や電話帳を使って数えてもよいかもしれません。マーケットの証明が必要な場合は、業界誌の記事やSNSでのユーザーの声を引用してもよいでしょう。
また、この点についても、市場やマーケットについて図示が可能であればわかりやすくなります。審査員は課題の解決によって得た結果について、ニーズがあるのかを厳しくチェックしています。どんな素晴らしい手法を用いたところで、その内容にニーズがなければ事業は失敗となり、投資が回収できないからです。
⑩成果事業化見込みの書き方
この点に関しては、計画を遂行した結果もたらされる成果は何か、それを達成する目標の時期はいつか、売上規模はどれくらいになるか、販売する商品の価格はいくらにする予定かなどを詳細に説明していきます。
これは、別箇所で記載する「会社全体の事業計画」(5年後まで)の売上高、営業利益、営業外費用、人件費、減価償却費に連動していなければなりません。
「〇年後には商品〇個の生産を達成する」「〇年後には従業員〇人の新規雇用を実現する」「〇年後には〇〇の地に新規店舗を設立する」など、課題解決によって得られる成果はさまざまあるかと思います。その点を具体的に示すことで、事業の実現可能性を示していきましょう。
3.まとめ
以上、ものづくり補助金の申請書である事業計画書のおさえるべきトピックについて、書き方のポイントや書くべき内容について解説してきました。
あくまで上記は書き方の一つであって、業種や事業の特性に沿って効果的な書き方はさまざまあるはずです。自分の事業や計画を魅力的に、説得力をもって説明するために申請者各自が工夫していくことが必要なことは言うまでもありません。
また、上記はあくまで書き始める際の書き方のヒントであり、審査を有利に進めるための方法ではないことにもご留意ください。最も重要なのは事業の中身です。
課題解決の手法に革新性があること、その手法によって生産性が向上すること、その課題解決にニーズがあることが最も重要です。書き方はあくまで、その証明をわかりやすく伝えるための手法です。せっかくの計画が書き方の問題で審査員に誤解されることがないよう、最低限のポイントはおさえておく必要があるのです。
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