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冷凍に強い|肉の冷凍・解凍・保存方法

冷凍してもおいしさを損ないにくい肉類


肉とその加工品は冷凍に大変適した食材です。

肉は冷凍すると組織内に氷結晶ができて組織の細胞膜が壊れてしまいますが、解凍すると細胞内の筋線維が水分を再吸収する性質をもっています。そのため、筋繊維が肉の食感を維持し、ドリップが出にくいという性質をもっています。

また、肉に多く含まれる飽和脂肪酸は、魚に含まれる不飽和脂肪酸と比較して酸化しにくいため、冷凍保存中に食材が酸化するいわゆる「冷凍焼け」の状態になりにくい性質も持ち合わせています。
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そのため、適切な方法で冷凍・解凍を行なえば、長期保存と品質維持が実現できる食材といえるでしょう。

小売り用の生肉を急速冷凍する方法


肉を急速冷凍する際には、一般的にエアブラスト冷凍機で冷気をあてるか、真空パウチにしてブライン冷凍機で液体に漬けて冷凍します。
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消費者用に細かく切ったものを冷凍する場合には、細かく切ったうえで、空気が入らないように平たく包装し冷凍します。エアブラスト冷凍機を使う場合は、ラップ包材等で隙間なく包んで平らに伸ばすか、袋に入れて脱気包装を行って冷凍するとよいでしょう。ブライン冷凍機を使う場合には、袋に入れて脱気包装を行ってから冷凍します。

これらの冷凍機を使うにあたって、生産性を重視するあまり低い温度の冷気を強く吹き付けたり、低温のブラインに漬けたりすると、表面だけ速く凍結してしまい、まるで乾燥しているかのように表面が白濁して見えることもあります。白濁しても品質に影響はありませんが、商品の外見を重視する場合は、白濁しない程度に温度を下げて使うことも必要です。

小売り用の生肉の保存性を高める方法
肉の冷凍保存中に気を付けるべきは、肉の乾燥と酸化です。冷凍した肉の周囲に空間があると、水分が蒸発して肉が乾燥してしまいます。加えて、肉が乾燥すると肉に含まれる脂肪が酸化しやすくなります。

これを防ぐためには、冷凍保存中の肉が空気に接しないように、食材に密着した包装を行うか、袋などに入れて脱気包装をするとよいでしょう。

さらに、肉を冷凍する際に、タレや調味料で味付けをしておくと保存性が高まります。タレや調味料の成分が食品中の水分をひきつけ、乾燥や酸化が起こりにくくなるのです。加えて、タレや調味料による味付けで、解凍中の酵素反応も少なくできます。

小売り用の生肉をおいしく解凍する方法


冷凍状態で販売する肉については、消費者用に適切な解凍方法について説明を添付する必要があります。

加熱用の生肉の場合は、ステーキ肉ならば凍ったままフライパンで焼いたり、しゃぶしゃぶ用の肉ならば沸騰した鍋に直接入れたりして一気に食品の温度が上がるように加熱をすると、酵素を失活させることができ、解凍時に食品の色や食感が悪くなることなく調理できます。
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凍ったまま加熱することが難しい場合は、氷水解凍を行いましょう。氷を入れた容器に水を張り、食品を漬けこんで解凍します。脱気包装された袋や真空パウチの場合は、そのまま氷水に漬け込みます。ラップ包装の場合は、袋に入れて中の空気を抜き、氷水に漬け込んで解凍します。

肉の中心に少し凍った芯が残る程度に解凍できたら、氷水から出し、包装材から取り出して使います。
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急ぎ解凍が必要な場合は、流水解凍でも構いません。水を張った容器に氷水解凍と同様に肉を漬け込み、上から水を流し入れて解凍します。
肉の表面が酵素反応により少し変化することがありますが、氷水解凍よりも速く解凍をすることができます。
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加熱調理、氷水解凍、流水解凍が難しい場合は、冷蔵庫解凍を行うと肉の品質を維持したまま解凍をすることができます。
ただし、冷蔵庫の中に生肉を入れてゆっくり解凍するこの方法は、酵素反応を抑えられますが、解凍するために1日程度の時間がかかります。
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調理済みの肉製品を冷凍・保存・解凍する方法


調理済の肉製品は加熱により酵素が失活していたり、味付けにより酵素反応が抑えられたりしている状態のため、冷凍・保存・解凍を通じて品質を高く保ちやすくなっています。

たとえば、ハムやベーコン、ソーセージなど味付きの加工肉は冷凍・解凍を行ってもほとんど影響がありません。冷凍・保存をする際には、生肉と同様に空気に触れないように袋に入れて脱気包装を行うか、ラップ等で隙間なく包装をしましょう。

解凍を行う場合は、酵素が失活しているか抑えられた状態のため、流水解凍や自然解凍で問題ありません。自然解凍を行う場合は、食品が解凍中に傷まないように温度管理や衛生管理に気を付けるようにしましょう。

業務用の生肉を冷凍する方法


業務用の生肉は、大きな塊の状態で冷凍され、小売店などで切り分けられることが多くあります。

厚い大きな塊の状態で肉を冷凍する場合は、急速冷凍機で冷凍を行ったとしても、中心部がやや緩慢冷凍になってしまいます。
しかし、肉はやや大きめの氷結晶ができたとしても、解凍時に組織が水分を再吸収する性質を持っているため、品質についてさほど心配する必要はありません。

一方、冷凍保存中は肉の表面で乾燥・酸化が起こります。このため、大きな塊の場合も真空パウチで密閉包装をすることが必要です。
肉が大きく、食材の周辺から空気を遮断した包装が難しい場合は、周辺部が乾燥・酸化してしまいますが、中心部の品質は高く保たれているため、周辺部を切り取って使うようにしましょう。

解凍を行う際には、大きな業務用の塊肉は流水解凍や氷水解凍ができないことがあります。この場合は低温の冷凍庫でゆっくり時間をかけて解凍すると品質を高く保てます。大量の冷凍肉を一度に解凍する必要がある工場などでは、冷蔵庫解凍では時間がかかってしまうため、マイクロ波や高周波を使った装置で数分から十数分の短時間で解凍を行うこともあります。

冷凍が保存のためではなく加工のために使われることがあります。薄切り肉を製造する場合は、生の状態で切ろうとするとよく砥いだ歯を使っても薄く切ることが難しいですが、半解凍の状態でスライスを行うと薄く切り分けることができます。

肉の特性を知って冷凍をうまく活用しよう


肉は冷凍保存と相性がよい食材のため、適切な冷凍・保存・解凍方法を用いれば、品質がよい状態で長く保存することができます。冷凍保存を活用して食材を長く保存することができれば、ロスを最小限に防げるだけでなく、通販を行うことができるなど、流通や販売の手段を広げることもできるでしょう。

冷凍を上手に活用することで、品質のよい肉をより多くの取引先や消費者に届けられるようにしましょう。

執筆・監修

おいしい冷凍研究所 編集部

株式会社えだまめ