適切な方法で分析しよう!食品の官能評価の種類
この記事のポイント
ひと口に「官能評価」といっても、さまざまな目的に沿った手法があります。ここでは、その代表的な評価方法について説明します。
日本では、官能評価の一般事項と主な試験方法がJIS Z 9080「官能評価分析-方法」で規定されています。1979(昭和54)年に制定され、2004(平成16)年にISO 4120(3点試験法)、ISO 4121(尺度を用いる評価)、ISO 5495(2点試験法)、ISO 6658(一般指針)、ISO 8587(順位法)を基礎として改正されました。規格は試験方法を「識別試験法」「尺度及びカテゴリーを用いる試験方法」「分析形試験法又は記述的試験法」に分けています(日本規格協会「JIS Z 9080:2004 官能評価分析-方法」プレビュー)。同規格は2024年6月20日に確認され、現在も有効です(日本規格協会 JIS Z 9080:2004 規格情報)。官能評価そのものの考え方は「官能評価」とは何か?で解説しています。
※用語集:官能検査
「官能評価」にはたくさんの方法がありますが、その評価を行う人(「パネル」と呼びます)がどんな属性なのかという点で、大きく2つに分かれます。
試料(評価対象物)に対して、差の判別や特性の評価をするために行う官能検査です。
パネル(評価をする人)には事前に識別テストを受けてもらい、一定水準以上の味の差異や濃度を識別できるかなど味覚の感度を確認します。JIS Z 9080でも「評価者の選抜及び訓練」「感度試験」が一般的要件として項目立てされています(前掲 JIS Z 9080:2004 プレビュー)。
この評価方法は、ケーキの甘みの強さや肉の硬さなど、試料の特性の評価や、品質間の差異を識別するために使われるため、パネルの嗜好は問題にされませんが、調査の精度や目的によっては、専門的な教育や訓練を受ける必要があります。この場合、官能評価は出荷検査、工程管理、処理効果の検出、品評会などの場面で使われます。
訓練されたパネルによる評価の場合は少人数でよく、1~10人程度で実施されます。
試料に対して、パネルの好みを調査するために行う官能検査です。
食品の好き嫌いが判断できる人であれば誰でもパネルになることが可能ですが、一般消費者の代表となるようなパネルを選ぶことが必要であるため、パネルの属性(年齢、性別、生活環境、喫煙の有無など)が評価結果に影響を及ぼすかどうかを考慮する必要があります。
影響を及ぼすおそれがない場合は、学生や社員など、身近な集団を利用することもできますが、及ぼす場合は対象消費者の構成を反映したパネルにする必要があります。
この場合、官能評価は商品開発のための消費者調査などの場面で使われます。パネルの数は多ければ多いほど市場の状況を正しく調査することができますが、調査にかかる日数や費用も考慮して必要最低限で行う必要があります。一般的には、社内調査や学生を対象とした調査では25~50人程度で実施され、対消費者の調査の場合は1000人以上に参加してもらうこともあります。
また、「官能評価」は、パネルの属性以外にも、パネルに試料をどのように評価させるかという点によってさまざまな分類があります。食品の官能評価を行う際には、調査の性質からどの方法が適切かを検証したうえで実施する必要があります。
ここでは、代表的な方法を紹介していきますが、各評価方法には適切な統計分析を行なう必要があります。詳しい方法については、専門書の解説を参照するようにしてください。
冷凍した食品の識別調査や嗜好調査では、2点識別試験法、2点嗜好試験法、3点識別試験法、配偶法、順位法、評点法などを使う場合が大半ですが、調査内容によってさまざまな方法を使い分けられるようにしましょう。
主な方法と、手順を定めた規格の対応は次のとおりです。
出典: 前掲 JIS Z 9080:2004 プレビュー、Estonian Centre for Standardisation「EVS-EN ISO 4120:2021」「ISO 5495:2005」「ISO 8587:2006」(ISO規格は2026年10月時点の最新版)。
差異のある2種の試料をパネルに与え、「苦い」「甘い」など、ある特性について妥当なほうを判断させます。試料間の差の有無の確認や、パネルに試料間の差異を識別する能力があるかを確認するために使われ、分析型官能評価でよく用いられる方法です。ISO 5495では、2つの選択肢から必ずどちらかを選ばせる強制選択法(2-AFC)と位置づけられています(前掲 ISO 5495:2005)。
客観的に差異のない(正解が存在しない)2種の試料をパネルに与え、「好ましいほう」「香りがよいほう」など、質問項目に該当するほうを選ばせる方法です。客観的な基準というより、嗜好を判断する試験ですので、対消費者の嗜好型官能評価でよく用いられます。
2種の試料(例えばA、B)を識別するために、AとBの2個を与えるのではなく、AABのように計3個の試料を与えて、異質なものを1個選ばせる方法です。
2点識別試験法と比較して、集中して該当するものを選ばせることができるうえ、区別はできていないもののたまたま正解を選んだ人の正答率を下げることができるため、より精度の高い調査を行うことができます。偶然に正解する確率は、2点識別試験法の2分の1に対し、3点識別試験法は3分の1です(選択肢が2つなら当てずっぽうでも2回に1回、3つなら3回に1回当たる計算です)。試料間の差の有無の確認と同時に、パネルに試料間の差異を識別する能力があるかを確認するために使われ、分析型官能評価でよく用いられる方法です。
複数種類の試料を2組作り、各組から同種の試料を1個ずつ組み合わせる方法です。パネルに試料間の差異を識別する能力があるかを確認するために使われ、分析型官能評価でよく用いられる方法です。複数回の繰り返しや、複数人のパネルでの調査を行うことによって、試料間に差異があるかどうかの判断にも使われます。
複数種の試料(3種類以上)に対して、味の濃さ、大きさ、好ましさなど、特性に関する順位をつけさせる方法です。分析型官能評価のパネルの識別能力を確かめたり、対消費者の嗜好型官能調査で嗜好の傾向の有無を確認したりするために使われます。ISO 8587は、順位法は差があるかどうかは判断できるものの、差の程度までは判断できない方法だとしています(前掲 ISO 8587:2006)。
与えられた試料(1種類以上)について、パネル自身の経験を通じて、その品質特性(味の強度、好みの程度など)を点数によって評価する方法です。評点の尺度(良い悪い、強い弱いなど)にはさまざまなものが使われます。分析型官能評価のパネルの評価能力の判断に使われたり、対消費者の嗜好型官能調査で嗜好の傾向を確認したりするために使われます。
冷凍食品での評点法の例として、日本冷凍食品協会の「冷凍食品の期限表示の実施要領」では、訓練された試験員3名が色沢・香味・食感をそれぞれ5点で採点し、1点の項目がある場合や平均点が3.0に達しない場合を不適格としています(日本冷凍食品協会「冷凍食品の期限表示の実施要領」)。
複数種の試料(3種類以上)を比較するために、2種類ずつ組み合わせた対を作り、各対のどちらが強いか、好ましいか、どちらがどの程度強いか好ましいかを比較判断させる方法。パネルの判断の一貫性を確かめたり、パネルの好みの傾向を調査したりするために活用され、分析型官能評価と嗜好型官能評価どちらでも使われます。
一対比較法で、対にした2つの試料に対し、強さや好ましさで判断するだけでなく、その程度を尺度で評価したりする方法です。試料の組み合わせや試食順序などの影響を判断の要因として捉えることができ、より精密な判断を行うことができます。
一対比較法と同じく、分析型官能評価と嗜好型官能評価どちらでも使われます。
この方法は、統計学者ヘンリー・シェッフェ(Henry Scheffé)が1952年に米国統計学会誌で発表した論文「An Analysis of Variance for Paired Comparisons」に由来します(Journal of the American Statistical Association 47巻259号)。原法のほかに芳賀の変法、中屋の変法などの変法があり、原法では個人差は検出できませんが、1人の評価者がすべての組み合わせを1回ずつ往復比較する中屋の変法では、比較順序を考慮しなくてよい場合に個人差を分離して検出できます(大島裕子ほか「シェッフェの一対比較法を拡張した感性評価法」FIT2004(第3回情報科学技術フォーラム))。比較する試料の数が多いと組み合わせが増えるため、変法の選択はパネルの負担も考えて決めましょう。
試料のもつ特性(印象)を正確にかつ詳細に描写するために、たとえば「上品-下品」「美しい-醜い」などの反対の意味をもつ形容詞の対を両端に置き、5~9段階の評価尺度上で評価をする方法です。
まとめ方の一つとして、評価尺度の各段階に数値(たとえば、+3~-3など)を設定し、n人の評価の平均値を尺度上に点で記入し、線で結ぶとともに、各試料の特性を書き入れると、結果をグラフ化して傾向を読み取ることができます。
評価用紙の設計は結果を左右します。具体的な作り方は官能評価の評価シートの作り方で解説しています。
官能評価が用いられる場面は調査の目的や対象によりさまざまです。
新商品の開発の参考資料としてや、商品の品質改善調査、商品品質の維持調査、商品の保存性テスト、品評会や鑑評会の結果分析、新製品または改良品市場テストとしてなど、数多くの用途があり、その内容に合わせて適切な調査法と分析法を用いる必要があります。
・標準品と比較して、試作品の検討を行う:2点・3点識別試験法、評点法
・標準品に比べて、嗜好性が向上しているか:2点・3点嗜好試験法、順位法
・試作品が標準品に比べて差があるか:2点・3点識別試験法、評点法
・試作品が標準品に比べて好まれているか:2点・3点嗜好試験法、順位法
標準品に比べて差があるか:2点・3点識別試験法、評点法
保存品が標準品に比べて差があるか:2点・3点識別試験法、評点法
冷凍食品の賞味期限の設定では、消費者庁のガイドラインも、官能検査を「適切にコントロールされた条件下で、適切な被験者により的確な手法によって評価された場合は、客観的な項目(指標)とすることが可能」としています(消費者庁「食品期限表示の設定のためのガイドライン」(令和7年3月))。
出品試料の格付け、採点:評点法
・評価したいサンプルが 1 点の場合(対象品がない場合):SD 法
・評価したいサンプルが 1 点の場合(対象品と比較する場合):2点・3点嗜好試験法、SD 法
・評価したいサンプルが数点の場合:順位法、一対比較法、SD 法
この記事で紹介した調査方法はあくまで一例です。ほかにも数多くの方法がありますので、先行研究などを参考にしながら、適切な方法で官能評価を実施するようにしましょう。冷凍食品の開発で試作品の評価設計から相談したい場合は、冷凍新規事業コンサルティングをご覧ください。
また、官能評価を行ううえで、忘れてはならないのが調査の有意性の判定です。特定の試験法を選び、調査・分析を行った結果、統計的に平均値に違いがあったとしても、その違いが意味のある差異かどうかを計算し、判定する必要があります。
実際には有意とはいえない差異を有意としてしまうと、調査の意味がなくなってしまいます。各試験法の有意性を判断する計算方法については、専門書に詳しく解説がありますので、必ず適切な方法で判定を実施するようにしてください。JIS Z 9080でも、識別試験法・尺度を用いる試験方法・記述的試験法のそれぞれについて「結果の解析」の章が設けられています(前掲 JIS Z 9080:2004 プレビュー)。
【参照】
日科技連官能検査委員会編『新版 官能検査ハンドブック』(日科技連出版社、1973)
古川秀子『おいしさを測る 食品官能検査の実際』(幸書房、1994)
朝倉康夫「官能検査4 官能評価に用いられる統計手法」日本ブドウ・ワイン学会誌8巻2号(1997)
- 官能評価は、パネル(評価する人)の属性で「分析型」と「嗜好型」に分かれ、評価のさせ方で2点・3点識別試験法、順位法、評点法、一対比較法、SD法などに分かれます。
- 主な試験方法はJIS Z 9080「官能評価分析-方法」とISO規格(3点試験法=ISO 4120、2点試験法=ISO 5495、順位法=ISO 8587)で手順が定められています。
- どの方法でも、最後に統計的に有意な差かどうかを判定することが欠かせません。
目的に沿って評価法を使い分けよう
ひと口に「官能評価」といっても、さまざまな目的に沿った手法があります。ここでは、その代表的な評価方法について説明します。
日本では、官能評価の一般事項と主な試験方法がJIS Z 9080「官能評価分析-方法」で規定されています。1979(昭和54)年に制定され、2004(平成16)年にISO 4120(3点試験法)、ISO 4121(尺度を用いる評価)、ISO 5495(2点試験法)、ISO 6658(一般指針)、ISO 8587(順位法)を基礎として改正されました。規格は試験方法を「識別試験法」「尺度及びカテゴリーを用いる試験方法」「分析形試験法又は記述的試験法」に分けています(日本規格協会「JIS Z 9080:2004 官能評価分析-方法」プレビュー)。同規格は2024年6月20日に確認され、現在も有効です(日本規格協会 JIS Z 9080:2004 規格情報)。官能評価そのものの考え方は「官能評価」とは何か?で解説しています。
※用語集:官能検査
評価をする人を選ぶーエキスパートによる品質評価と消費者の好みによる評価
「官能評価」にはたくさんの方法がありますが、その評価を行う人(「パネル」と呼びます)がどんな属性なのかという点で、大きく2つに分かれます。
分析型官能評価
試料(評価対象物)に対して、差の判別や特性の評価をするために行う官能検査です。
パネル(評価をする人)には事前に識別テストを受けてもらい、一定水準以上の味の差異や濃度を識別できるかなど味覚の感度を確認します。JIS Z 9080でも「評価者の選抜及び訓練」「感度試験」が一般的要件として項目立てされています(前掲 JIS Z 9080:2004 プレビュー)。
この評価方法は、ケーキの甘みの強さや肉の硬さなど、試料の特性の評価や、品質間の差異を識別するために使われるため、パネルの嗜好は問題にされませんが、調査の精度や目的によっては、専門的な教育や訓練を受ける必要があります。この場合、官能評価は出荷検査、工程管理、処理効果の検出、品評会などの場面で使われます。
訓練されたパネルによる評価の場合は少人数でよく、1~10人程度で実施されます。
嗜好型官能評価
試料に対して、パネルの好みを調査するために行う官能検査です。
食品の好き嫌いが判断できる人であれば誰でもパネルになることが可能ですが、一般消費者の代表となるようなパネルを選ぶことが必要であるため、パネルの属性(年齢、性別、生活環境、喫煙の有無など)が評価結果に影響を及ぼすかどうかを考慮する必要があります。
影響を及ぼすおそれがない場合は、学生や社員など、身近な集団を利用することもできますが、及ぼす場合は対象消費者の構成を反映したパネルにする必要があります。
この場合、官能評価は商品開発のための消費者調査などの場面で使われます。パネルの数は多ければ多いほど市場の状況を正しく調査することができますが、調査にかかる日数や費用も考慮して必要最低限で行う必要があります。一般的には、社内調査や学生を対象とした調査では25~50人程度で実施され、対消費者の調査の場合は1000人以上に参加してもらうこともあります。
評価のやり方を選ぶー調査の目的に沿って、適切な方法を選ぼう
また、「官能評価」は、パネルの属性以外にも、パネルに試料をどのように評価させるかという点によってさまざまな分類があります。食品の官能評価を行う際には、調査の性質からどの方法が適切かを検証したうえで実施する必要があります。
ここでは、代表的な方法を紹介していきますが、各評価方法には適切な統計分析を行なう必要があります。詳しい方法については、専門書の解説を参照するようにしてください。
冷凍した食品の識別調査や嗜好調査では、2点識別試験法、2点嗜好試験法、3点識別試験法、配偶法、順位法、評点法などを使う場合が大半ですが、調査内容によってさまざまな方法を使い分けられるようにしましょう。
主な方法と、手順を定めた規格の対応は次のとおりです。
| 方法 | 主な目的 | 手順を定めた規格 |
|---|---|---|
| 2点識別試験法・2点嗜好試験法 | 2試料の差の有無・好みの判定 | JIS Z 9080「2点試験法」(2点識別試験法はISO 5495:2005にも対応) |
| 3点識別試験法 | 2試料の差の有無の判定、パネルの識別能力の確認 | JIS Z 9080「3点試験法」、ISO 4120:2021 |
| 順位法 | 3種類以上の試料の順位づけ | JIS Z 9080「順位法」、ISO 8587:2006 |
| 評点法 | 品質特性の程度を点数で評価 | JIS Z 9080「尺度及びカテゴリーを用いる試験方法」 |
出典: 前掲 JIS Z 9080:2004 プレビュー、Estonian Centre for Standardisation「EVS-EN ISO 4120:2021」「ISO 5495:2005」「ISO 8587:2006」(ISO規格は2026年10月時点の最新版)。
2点識別試験法
差異のある2種の試料をパネルに与え、「苦い」「甘い」など、ある特性について妥当なほうを判断させます。試料間の差の有無の確認や、パネルに試料間の差異を識別する能力があるかを確認するために使われ、分析型官能評価でよく用いられる方法です。ISO 5495では、2つの選択肢から必ずどちらかを選ばせる強制選択法(2-AFC)と位置づけられています(前掲 ISO 5495:2005)。
2点嗜好試験法
客観的に差異のない(正解が存在しない)2種の試料をパネルに与え、「好ましいほう」「香りがよいほう」など、質問項目に該当するほうを選ばせる方法です。客観的な基準というより、嗜好を判断する試験ですので、対消費者の嗜好型官能評価でよく用いられます。
3点識別試験法
2種の試料(例えばA、B)を識別するために、AとBの2個を与えるのではなく、AABのように計3個の試料を与えて、異質なものを1個選ばせる方法です。
2点識別試験法と比較して、集中して該当するものを選ばせることができるうえ、区別はできていないもののたまたま正解を選んだ人の正答率を下げることができるため、より精度の高い調査を行うことができます。偶然に正解する確率は、2点識別試験法の2分の1に対し、3点識別試験法は3分の1です(選択肢が2つなら当てずっぽうでも2回に1回、3つなら3回に1回当たる計算です)。試料間の差の有無の確認と同時に、パネルに試料間の差異を識別する能力があるかを確認するために使われ、分析型官能評価でよく用いられる方法です。
配偶法
複数種類の試料を2組作り、各組から同種の試料を1個ずつ組み合わせる方法です。パネルに試料間の差異を識別する能力があるかを確認するために使われ、分析型官能評価でよく用いられる方法です。複数回の繰り返しや、複数人のパネルでの調査を行うことによって、試料間に差異があるかどうかの判断にも使われます。
順位法
複数種の試料(3種類以上)に対して、味の濃さ、大きさ、好ましさなど、特性に関する順位をつけさせる方法です。分析型官能評価のパネルの識別能力を確かめたり、対消費者の嗜好型官能調査で嗜好の傾向の有無を確認したりするために使われます。ISO 8587は、順位法は差があるかどうかは判断できるものの、差の程度までは判断できない方法だとしています(前掲 ISO 8587:2006)。
評点法
与えられた試料(1種類以上)について、パネル自身の経験を通じて、その品質特性(味の強度、好みの程度など)を点数によって評価する方法です。評点の尺度(良い悪い、強い弱いなど)にはさまざまなものが使われます。分析型官能評価のパネルの評価能力の判断に使われたり、対消費者の嗜好型官能調査で嗜好の傾向を確認したりするために使われます。
冷凍食品での評点法の例として、日本冷凍食品協会の「冷凍食品の期限表示の実施要領」では、訓練された試験員3名が色沢・香味・食感をそれぞれ5点で採点し、1点の項目がある場合や平均点が3.0に達しない場合を不適格としています(日本冷凍食品協会「冷凍食品の期限表示の実施要領」)。
一対比較法
複数種の試料(3種類以上)を比較するために、2種類ずつ組み合わせた対を作り、各対のどちらが強いか、好ましいか、どちらがどの程度強いか好ましいかを比較判断させる方法。パネルの判断の一貫性を確かめたり、パネルの好みの傾向を調査したりするために活用され、分析型官能評価と嗜好型官能評価どちらでも使われます。
シェッフェの一対比較法
一対比較法で、対にした2つの試料に対し、強さや好ましさで判断するだけでなく、その程度を尺度で評価したりする方法です。試料の組み合わせや試食順序などの影響を判断の要因として捉えることができ、より精密な判断を行うことができます。
一対比較法と同じく、分析型官能評価と嗜好型官能評価どちらでも使われます。
この方法は、統計学者ヘンリー・シェッフェ(Henry Scheffé)が1952年に米国統計学会誌で発表した論文「An Analysis of Variance for Paired Comparisons」に由来します(Journal of the American Statistical Association 47巻259号)。原法のほかに芳賀の変法、中屋の変法などの変法があり、原法では個人差は検出できませんが、1人の評価者がすべての組み合わせを1回ずつ往復比較する中屋の変法では、比較順序を考慮しなくてよい場合に個人差を分離して検出できます(大島裕子ほか「シェッフェの一対比較法を拡張した感性評価法」FIT2004(第3回情報科学技術フォーラム))。比較する試料の数が多いと組み合わせが増えるため、変法の選択はパネルの負担も考えて決めましょう。
SD法(意味微分法、意味測定法)
試料のもつ特性(印象)を正確にかつ詳細に描写するために、たとえば「上品-下品」「美しい-醜い」などの反対の意味をもつ形容詞の対を両端に置き、5~9段階の評価尺度上で評価をする方法です。
まとめ方の一つとして、評価尺度の各段階に数値(たとえば、+3~-3など)を設定し、n人の評価の平均値を尺度上に点で記入し、線で結ぶとともに、各試料の特性を書き入れると、結果をグラフ化して傾向を読み取ることができます。
評価用紙の設計は結果を左右します。具体的な作り方は官能評価の評価シートの作り方で解説しています。
官能評価の用途はさまざま
官能評価が用いられる場面は調査の目的や対象によりさまざまです。
新商品の開発の参考資料としてや、商品の品質改善調査、商品品質の維持調査、商品の保存性テスト、品評会や鑑評会の結果分析、新製品または改良品市場テストとしてなど、数多くの用途があり、その内容に合わせて適切な調査法と分析法を用いる必要があります。
新製品開発の場合
・標準品と比較して、試作品の検討を行う:2点・3点識別試験法、評点法
・標準品に比べて、嗜好性が向上しているか:2点・3点嗜好試験法、順位法
製品の品質改善
・試作品が標準品に比べて差があるか:2点・3点識別試験法、評点法
・試作品が標準品に比べて好まれているか:2点・3点嗜好試験法、順位法
製品品質の維持
標準品に比べて差があるか:2点・3点識別試験法、評点法
製品の保存性の確認
保存品が標準品に比べて差があるか:2点・3点識別試験法、評点法
冷凍食品の賞味期限の設定では、消費者庁のガイドラインも、官能検査を「適切にコントロールされた条件下で、適切な被験者により的確な手法によって評価された場合は、客観的な項目(指標)とすることが可能」としています(消費者庁「食品期限表示の設定のためのガイドライン」(令和7年3月))。
品評会、鑑評会
出品試料の格付け、採点:評点法
新製品または改良品の市場テスト
・評価したいサンプルが 1 点の場合(対象品がない場合):SD 法
・評価したいサンプルが 1 点の場合(対象品と比較する場合):2点・3点嗜好試験法、SD 法
・評価したいサンプルが数点の場合:順位法、一対比較法、SD 法
この記事で紹介した調査方法はあくまで一例です。ほかにも数多くの方法がありますので、先行研究などを参考にしながら、適切な方法で官能評価を実施するようにしましょう。冷凍食品の開発で試作品の評価設計から相談したい場合は、冷凍新規事業コンサルティングをご覧ください。
最後に調査結果が有意な内容かを必ず判定しよう
また、官能評価を行ううえで、忘れてはならないのが調査の有意性の判定です。特定の試験法を選び、調査・分析を行った結果、統計的に平均値に違いがあったとしても、その違いが意味のある差異かどうかを計算し、判定する必要があります。
実際には有意とはいえない差異を有意としてしまうと、調査の意味がなくなってしまいます。各試験法の有意性を判断する計算方法については、専門書に詳しく解説がありますので、必ず適切な方法で判定を実施するようにしてください。JIS Z 9080でも、識別試験法・尺度を用いる試験方法・記述的試験法のそれぞれについて「結果の解析」の章が設けられています(前掲 JIS Z 9080:2004 プレビュー)。
まとめ
- 官能評価は、差を見分ける「分析型」と好みを調べる「嗜好型」に分かれ、目的に応じてパネルの人数と属性を決めます。
- 3点識別試験法は偶然の正解率が3分の1と2点識別試験法(2分の1)より低く、差の検出に向きます。手順はJIS Z 9080やISO 4120などで定められています。
- どの方法でも、結果が統計的に有意かどうかを必ず判定しましょう。
【参照】
日科技連官能検査委員会編『新版 官能検査ハンドブック』(日科技連出版社、1973)
古川秀子『おいしさを測る 食品官能検査の実際』(幸書房、1994)
朝倉康夫「官能検査4 官能評価に用いられる統計手法」日本ブドウ・ワイン学会誌8巻2号(1997)