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適切な方法で分析しよう! 食品の官能評価の種類

人の感覚を使って対象物を評価する「官能評価」にはさまざまな方法があり、目的に沿って使い分ける必要があります。 本記事では官能評価の大まかな分類と代表的な方法を紹介するとともに、どういった場面で官能評価を活用すべきかを示します。

目的に沿って評価法を使い分けよう

ひと口に「官能評価」といっても、さまざまな目的に沿った手法があります。
ここでは、その代表的な評価方法について説明します。

 
 

評価をする人を選ぶーエキスパートによる品質評価と消費者の好みによる評価

「官能評価」にはたくさんの方法がありますが、その評価を行う人(「パネル」と呼びます)がどんな属性なのかという点で、大きく2つに分かれます。
 

分析型官能評価

試料(評価対象物)に対して、差の判別や特性の評価をするために行う官能検査です。
パネル(評価をする人)には事前に識別テストを受けてもらい、一定水準以上の味の差異や濃度を識別できるかなど味覚の感動を確認します。
この評価方法は、ケーキの甘みの強さや肉の硬さなど、試料の特性の評価や、品質間の差異を識別するために使われるため、パネルの嗜好は問題にされませんが、調査の精度や目的によっては、専門的な教育や訓練を受ける必要があります。
この場合、官能評価は出荷検査、工程管理、処理効果の検出、品評会などの場面で使われます。
訓練されたパネルによる評価の場合は少人数でよく、1~10人程度で実施されます。
 

嗜好型官能評価

試料に対して、パネルの好みを調査するために行う官能検査です。
食品の好き嫌いが判断できる人であれば誰でもパネルになることが可能ですが、一般消費者の代表となるようなパネルを選ぶことが必要であるため、パネルの属性(年齢、性別、生活環境、喫煙の有無など)が評価結果に影響を及ぼすかどうかを考慮する必要があります。
影響を及ぼすおそれがない場合は、学生や社員など、身近な集団を利用することもできますが、及ぼす場合は対象消費者の構成を反映したパネルにする必要があります。
この場合、官能評価は商品開発のための消費者調査などの場面で使われます。
パネルの数は多ければ多いほど市場の状況を正しく調査することができますが、調査にかかる日数や費用も考慮して必要最低限で行う必要があります。
一般的には、社内調査や学生を対象とした調査では25~50人程度で実施され、対消費者の調査の場合は1000人以上に参加してもらうこともあります。

 
 

評価のやり方を選ぶー調査の目的に沿って、適切な方法を選ぼう

また、「官能評価」は、パネルの属性以外にも、パネルに試料をどのように評価させるかという点によってさまざまな分類があります。
食品の官能評価を行う際には、調査の性質からどの方法が適切かを検証したうえで実施する必要があります。
ここでは、代表的な方法を紹介していきますが、各評価方法には適切な統計分析を行なう必要があります。詳しい方法については、専門書の解説を参照するようにしてください。
 
冷凍した食品の識別調査や嗜好調査では、2点識別試験法、2点嗜好試験法、3点識別試験法、配偶法、順位法、評点法などを使う場合が大半ですが、調査内容によってさまざまな方法を使い分けられるようにしましょう。
 

2点識別試験法

差異のある2種の試料をパネルに与え、「苦い」「甘い」など、ある特性について妥当なほうを判断させます。
試料間の差の有無の確認や、パネルに試料間の差異を識別する能力があるかを確認するために使われ、分析型官能評価でよく用いられる方法です。
 

2点嗜好試験法

客観的に差異のない(正解が存在しない)2種の試料をパネルに与え、「好ましいほう」「香りがよいほう」など、質問項目に該当するほうを選ばせる方法です。
客観的な基準というより、嗜好を判断する試験ですので、対消費者の嗜好型官能評価でよく用いられます。
 

3点識別試験法

2種の試料(例えばA、B)を識別するために、AとBの2個を与えるのではなく、AABのように計3個の試料を与えて、異質なものを1個選ばせる方法です。
2点識別試験法と比較して、集中して該当するものを選ばせることができるうえ、区別はできていないもののたまたま正解を選んだ人の正答率を下げることができるため、より精度の高い調査を行うことができます。
試料間の差の有無の確認と同時に、パネルに試料間の差異を識別する能力があるかを確認するために使われ、分析型官能評価でよく用いられる方法です。
 

配偶法

複数種類の試料を2組作り、各組から同種の試料を1個ずつ組み合わせる方法です。パネルに試料間の差異を識別する能力があるかを確認するために使われ、分析型官能評価でよく用いられる方法です。
複数回の繰り返しや、複数人のパネルでの調査を行うことによって、試料間に差異があるかどうかの判断にも使われます。
 

順位法

複数種の試料(3種類以上)に対して、味の濃さ、大きさ、好ましさなど、特性に関する順位をつけさせる方法です。
分析型官能評価のパネルの識別能力を確かめたり、対消費者の嗜好型官能調査で嗜好の傾向の有無を確認したりするために使われます。
 

評点法

与えられた試料(1種類以上)について、パネル自身の経験を通じて、その品質特性(味の強度、好みの程度など)を点数によって評価する方法です。評点の尺度(良い悪い、強い弱いなど)にはさまざまなものが使われます。
分析型官能評価のパネルの評価能力の判断に使われたり、対消費者の嗜好型官能調査で嗜好の傾向を確認したりするために使われます。
 

一対比較法

複数種の試料(3種類以上)を比較するために、2種類ずつ組み合わせた対を作り、各対のどちらが強いか、好ましいか、どちらがどの程度強いか好ましいかを比較判断させる方法。
パネルの判断の一貫性を確かめたり、パネルの好みの傾向を調査したりするために活用され、分析型官能評価と嗜好型官能評価どちらでも使われます。
 

シェッフェの一対比較法

一対比較法で、対にした2つの試料に対し、強さや好ましさで判断するだけでなく、その程度を尺度で評価したりする方法です。試料の組み合わせや試食順序などの影響を判断の要因として捉えることができ、より精密な判断を行うことができます。
一対比較法と同じく、分析型官能評価と嗜好型官能評価どちらでも使われます。
 

SD法(意味微分法、意味測定法)

試料のもつ特性(印象)を正確にかつ詳細に描写するために、たとえば「上品-下品」「美しい-醜い」などの対象用語を両端に置き、5~9段階の評価尺度上で評価をする方法です。
まとめ方の一つとして、評価尺度の各段階に数値(たとえば、+3~-3など)を設定し、n人の評価の平均値を尺度上に点で記入し、線で結ぶとともに、各試料の特性を書き入れると、結果をグラフ化して傾向を読み取ることができます。

 
 

官能評価の用途はさまざま

官能評価が用いられる場面は調査の目的や対象によりさまざまです。
新商品の開発の参考資料としてや、商品の品質改善調査、商品品質の維持調査、商品の保存性テスト、品評会や鑑評会の結果分析、新製品または改良品市場テストとしてなど、数多くの用途があり、その内容に合わせて適切な調査法と分析法を用いる必要があります。
 

新製品開発の場合

・標準品と比較して、試作品の検討を行う:2点・3点識別試験法、評点法
・標準品に比べて、噌好性が向上しているか:2点・3点嗜好試験法、順位法 
 

製品の品質改善

・試作品が標準品に比べて差があるか:2点・3点識別試験法、評点法
・試作品が標準品に比べて好まれているか:2点・3点嗜好試験法、順位法 
 

製品品質の維持

標準品に比べて差があるか:2点・3点識別試験法、評点法
 

製品の保存性の確認

保存品が標準品に比べて差があるか:2点・3点識別試験法、評点法
 

品評会、鑑評会

出品試料の格付け、採点:評点法
 

新製品または改良品の市場テスト

・評価したいサンプルが 1 点の場合(対象品がない場合):SD 法
・評価したいサンプルが 1 点の場合(対象品と比較する場合):2点・3点嗜好試験法、SD 法
・評価したいサンプルが数点の場合:順位法、一対比較法、SD 法
 
この記事で紹介した調査方法はあくまで一例です。ほかにも数多くの方法がありますので、先行研究などを参考にしながら、適切な方法で官能評価を実施するようにしましょう。

 
 

最後に調査結果が有意な内容かを必ず判定しよう

また、官能評価を行ううえで、忘れてはならないのが調査の有意性の判定です。
特定の試験法を選び、調査・分析を行った結果、統計的に平均値に違いがあったとしても、その違いが意味のある差異かどうかを計算し、判定する必要があります。
 
実際には有意とはいえない差異を有意としてしまうと、調査の意味がなくなってしまいます。
各試験法の有意性を判断する計算方法については、専門書に詳しく解説がありますので、必ず適切な方法で判定を実施するようにしてください。

 
 
【参照】
日科技連官能検査委員会編『新版 官能検査ハンドブック』(日科技連出版社、1973)
古川秀子『おいしさを測る 食品官能検査の実際』(幸書房、1994)
朝倉康夫「官能検査4 官能評価に用いられる統計手法」日本ブドウ・ワイン学会誌8巻2号(1997)

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