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液体窒素冷凍


液体窒素冷凍の基本





液体窒素冷凍(えきたいちっそれいとう)とは、冷凍食品を急速冷凍させる際の方法の一つで、超低温の液体窒素を使った凍結法です。
 
液体窒素の沸点はマイナス196℃と非常に低いため、超低温で気体となります。気体となった液体窒素を食品に吹き付けると、食品を急速に冷凍させることができます。
 
他の冷凍法と比べて、非常に短時間で冷凍できるので、氷結晶を微細に抑えることができます。そのため、氷結晶による、食品組織へのダメージが少なくなります。
 
液体窒素の中に食品を直接浸す方法もありますが、そのまま浸しては食品の表面と内部の温度差が極端になって、割れが生じてしまいます。そのため、事前に低温ガスで予冷して、食品内部の温度を下げておくことが一般的です。

液体窒素を使用した冷凍法は超低温で空気から分離した高純度な液体窒素を消耗するため、冷凍工程のランニングコストが高くなります。
 
そのため、高級魚やエビ、カニなどの高級食品、おせちや旬のあるシーズナルな食品などに利用されることが大半です。

一方で、凍結スピードが速く短時間で多くの量を処理できることなどから、生産計画に組み込みやすいという利点があります。操業時間を短縮することで人件費を抑えることも可能です。

このように、最近では製造工程における凍結時間や加工性の問題などのボトルネックの解決に用いられることもあります。液状食品の凍結など、技術を応用した用途に利用されることも多くなっています。












 











液体窒素冷凍の活用事例





液体窒素冷凍はエアブラスト冷凍機、ブライン冷凍機等と比較して冷凍スピードが著しく速いため、以下のような場合に効果を発揮します。










1.高品質の冷凍品を作る場合





食品内の氷結晶を小さく抑え、高品質(高付加価値)の冷凍品を製造したい場合に適しています。










液体窒素冷凍は一般的な冷凍機よりも冷凍工程のランニングコストは高くなりますが、非常に冷凍スピードが速いため、食品内の氷結晶が小さくなります。そのため、凍結工程における食品の組織へのダメージを最小限に抑えることができ、高品質な冷凍を実現することができます。










稀少な作物や高級魚介、精肉類などの品質維持に活用されているほか、ムースや果物類を使用した菓子類(スイーツ類)を冷凍する場合も、氷結晶による舌触りへの影響を最低限に抑えることができます。











2.旬の産品などを一度に大量に冷凍する場合





液体窒素冷凍機は小型の機体でも短時間で大量の食品を冷凍できます。










工場などではトンネルフリーザーなど大型のコンベヤ式の冷凍機で大量製造を行っていますが、農場や漁協、卸業者などで旬の素材を冷凍したい場合は、時期により冷凍する量に大きな差がでてしまい、大型の機械の初期費用を回収しづらいという難点があります。










その場合は、小型の液体窒素冷凍機を導入し、一時期だけ集中的に冷凍をしてもよいでしょう。










また、液体窒素冷凍機は冷凍庫内に気化した液体窒素を吹き込んで冷凍する方式であるため、一般的な熱源機械を搭載した冷凍機よりも単純な構造になっています。










そのため、庫内の清掃やメンテナンスをしやすいという利点があるため、局所的な使用であっても動作確認や清掃が容易というメリットもあります。










ノンフロンで空気の主成分である自然冷媒の使用で環境にも優しい冷媒を使用している点も特徴です。











3.一般的な冷凍機の能力を補う場合





液体窒素冷凍を「補助冷却機」として一般的なエアブラスト冷凍機と組み合わせて使うこともあります。










加熱直後の熱をもった食品や、厚みがある食品を冷凍する場合、一般的な冷凍機では、冷凍能力が不足してしまう場合があるからです。










その能力不足分について、液体窒素冷凍機を前段階または後段階に設置することで補うことができます。既存の冷凍機の熱交換器吹き出し側に液体窒素ノズルを設置することで、冷凍能力を底上げすることも可能です。










この補助冷却のメリットは、全工程を液体窒素冷凍にしないことで冷凍のコストを抑えつつ、製造能力を上げられることです。凍結する食品や製造の手法によりますが、製造量に対する冷却コストを、一般的な冷凍機を使用する場合とほぼ同程度に抑えることも可能です。










また、「補助冷却」を食品の加工に使うことも可能です。冷凍前に表面に液体窒素を吹き付け表面のみを選択的に凍結すれば、肉やケーキ類を断面がきれいな状態でカットすることができます。










また、補助冷却は冷凍する食品のみに使うわけではありません。冷蔵や常温で流通する食品の加工や流通時の品質保持のためにも使われています。












補助冷却を活用した食品加工の例

・肉の薄切りカット

・加工肉の温度調整(ナゲット、ハンバーグ用素材肉の成形)

・ケーキのカット(断面を美しく、カット時の欠落防止)

・ケーキ類などの形状保持(表面を凍結し崩れを防止)

・製品同士の付着防止(カット済みのバターなど)

・包装材への付着防止(クリームやチョコレートコーティング商品など)

・沈降防止(パフェ類の潰れ・沈みの防止など)



 










液体窒素冷凍機の選定





液体窒素冷凍機には大量生産用のトンネル式と、少量生産用のバッチ式があります。










 1.トンネル式液体窒素冷凍機





トンネル式はコンベヤで輸送される商品を冷凍庫内に自動で運び入れ、液体窒素を噴霧して冷凍する冷凍機です。










従来、液体窒素冷凍は大量生産のために活用されることが多かったため、液体窒素を用いる冷凍機の大半はこのトンネル式です。





画像提供:大陽日酸株式会社










2. バッチ式液体窒素冷凍機





箱型の冷凍機の中に別途設置のタンクから気化した液体窒素を吹き込み、冷凍する方式です。





画像提供:大陽日酸株式会社




食品の出し入れが頻繁になるので、トンネル式ほど大量生産には向いていませんが、初期投資の設備費用が低く抑えられます。また、複雑な熱交換器が設置されていないため装置の内部構造がシンプルで、清掃やメンテナンスがしやすいという利点があります。










冷凍品の製造が一時期に集中する場合や、少量の高級冷凍品を製造したい場合は、このバッチ式液体窒素冷凍機が適しているでしょう。












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 【協力】
大陽日酸株式会社
 
【参照】
『新版 食品冷凍技術』(社団法人日本冷凍空調学会、2009)


執筆・監修

おいしい冷凍研究所 編集部

株式会社えだまめ