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院外調理システムとは?システムの種類からメリット・デメリットまで徹底解説!

医療・福祉施設における給食運営において、厨房の人手不足やコスト、衛生管理にお悩みではありませんか?毎日の食事提供は重要な業務である一方、これらの課題は現場にとって大きな負担となっているでしょう。

本記事では、厨房業務を外部委託する「院外調理システム」について、その概要から種類、導入によるメリットとデメリットを詳しく解説します。

院外調理システムとは?


院外調理システムとは

院外調理システムとは、病院内の厨房ではなく、外部の施設で食事を調理し、病院に配送するシステムです。セントラルキッチンで調理から洗浄までを一貫して行い、クックチルやクックフリーズといった手法で保存された食事は各施設へ配送され、提供時には再加熱する、あるいは専門の外部業者から調理済み食材を購入することで食事提供の対応をします。

① 内製でのセントラルキッチン構築


自社で専用の調理施設(セントラルキッチン)を整備・運営する方法です。

この方法では、人員配置の最適化や厨房スペースの有効活用、ランニングコストの削減といったメリットが見込めます。ただし、設備投資や管理体制の構築といった初期コストがかかる点には留意が必要です。

② 外部業者へ委託(OEM)


専門業者に調理業務を委託し、出来上がった食事を配送してもらう方法です。

外部委託により、献立作成や調理業務を効率化できるため、職員の負担軽減が期待できます。一方で、提供できるメニューの種類や柔軟な対応に制限がある場合があるため、業者選定時には対応力や品質基準を確認することが重要です。

セントラルキッチンに関する詳しい内容は、以下の記事をご覧ください。
【関連記事セントラルキッチンの仕組みは? | 飲食店のコストダウンと売上向上を果たす集中調理

院外調理システムの調理・配膳パターン


院外調理システムには、主に以下の2つの調理・配膳パターンがあります。

・クックチル
・クックフリーズ

①クックチル(ニュークックチル)


クックチルとは調理済みの食品を迅速に冷却し、低温で保存、提供時に再加熱する調理法です。クックチルでは加熱後30分以内に急速冷却を行い、90分以内に中心温度を0〜3℃に保ち、保存します。

クックチルにすることで、栄養価の損失を抑制し、風味や見た目の劣化を最小限に留められたり、温かい料理を適温で提供できたり、コストを削減できるといったメリットがあります。なお近年は、クックチルのさらなる進化形として「ニュークックチル」も登場し、注目を集めています。

②クックフリーズ


クックフリーズは、加熱調理済みの食品を急速凍結し、冷凍(-18℃以下)で衛生的に保存する調理・配膳システムです。

急速凍結は、食品細胞の破壊を抑え味・食感・栄養価の劣化を最小限にするための重要な工程です。提供直前に必要量を取り出し、スチームコンベクションオーブン(スチコン)等で再加熱して提供します。

調理と提供時間を分離し計画的な大量生産を可能にすることで、業務効率化や労働力の平準化を実現し、食品ロス削減、品質均一化、衛生管理向上にも貢献します。

また冷凍による長期保存が可能なため、配送頻度も少なく済むことで、クックチルの日配に比べて配送に関わる費用も抑えられます。

病院、高齢者施設、学校給食、事業所、機内食など、大規模な食事提供が必要な現場で広く活用されています。

【関連記事】急速冷凍を活用したセントラルキッチンの立ち上げ・運営を徹底解説!

 

院外調理システムのメリット


院外調理システムのメリット

院外調理システムのメリットは、以下の3つです。

・コスト削減効果
・業務効率化および人手不足の解消
・衛生管理レベルの向上

コスト削減効果


院外調理システム導入は、さまざまな経費の節減に繋がります。例えば、以下のような効果が期待できるでしょう。

・セントラルキッチン活用による、食材の大量仕入れによるコスト削減
・施設内厨房が不要となることによる、厨房設備の維持管理費や修繕費を削減

また上述の通り、院外調理システムを実施する場合、大きく以下の2パターンがあります。

① 内製でのセントラルキッチン構築
② 外部業者へ委託(OEM)


自社でセントラルキッチンを構築する場合、初期投資として建設費用が必要となりますが、長期的には運営コストの削減や品質の安定化が期待できます。また、調理工程や廃棄物処理を一拠点に集約できるため、衛生管理や廃棄物処理の負担軽減が可能です。

外部業者に調理を委託する場合、初期投資が不要で、迅速な導入が可能です。また、厨房設備の維持管理費や人件費の削減が期待でき、より大幅なコスト削減を実現できる可能性があります。さらに、各施設で発生していた調理工程に伴う廃棄物処理の負担も、委託によって軽減されます。

業務効率化および人手不足の解消


自社でセントラルキッチンを構築すれば、専門的な調理業務をセントラルキッチンで集中して行うことで、各施設での人材配置が最適化され、過剰な人件費の削減が見込めます。

また、調理業務を外部に委託すれば、施設内での調理スタッフの採用や教育の負担が軽減されます。これにより、採用活動や人材育成にかかるコストや時間を削減できます。

従来のように各施設ごとに厨房で調理をする場合、施設数が増加するにつれて、各施設での調理業務を担当する人材の確保が必要となり、募集人数も増加する傾向にありました。特に、早朝や祝祭日などの特定の時間帯に勤務できる人材や、複雑な調理工程をこなせるスキルを持つ人材の採用が求められ、昨今の人手不足を背景に採用活動の負担が大きくなっていました。

しかし、院外調理システムの導入により、調理作業がセントラルキッチンで一括して行われ、各施設での調理業務が簡略化できます。これにより、各施設での人材確保の負担が軽減され、採用活動の効率化が期待できます。

衛生管理レベルの向上


院外調理システムは、厳格な衛生基準を調理プロセスに設けることで、衛生管理レベルを統一することが可能です。そうすることで、各調理場で管理体制にバラツキが出るといったことを防げるでしょう。このような努力を事業者側がすれば、施設全体の衛生管理の向上に繋がります。

調理はセントラルキッチンで行われることで、安全性を重視した調理が可能です。加熱後、迅速な冷却処理を行うことで、細菌の繁殖を抑制し、食品事故の防止につなげることができます

調理済みの食事は、専用の保管庫で厳密な温度管理と時間管理の下に保管され、提供直前に75℃以上の温度に再加熱されます。再加熱後は、直接配膳できるため、人の手を介さずに衛生的に食事を提供することが可能です。

HACCPに準拠した衛生管理の徹底された委託先へ業務を委託すれば、常に高い衛生レベルを維持することもできます。自社でセントラルキッチンを構築する場合は、HACCPに基づいた衛生管理の設計が必要となります。

院外調理システムのデメリット


院外調理システムのデメリット

院外調理システムのデメリットは、以下の4つです。

・配送時間や管理状況による品質の変化
・柔軟性の低下・個別対応の難しさ
・緊急時の対応負荷
誤発注・誤配送

それぞれのデメリットを知り、院外調理システムを導入するか検討しましょう。

配送時間や管理状況による品質の変化


院外調理システムでは施設への食事配送を行うため、調理から提供までの時間と、配送中・施設内の管理状況が、食事の品質に大きく影響を与えます。

特に、調理直後の提供ができないため風味や食感が劣化する可能性があります。特にクックチル方式など、温度管理が不十分な場合、細菌繁殖や食品の腐敗を招くリスクがあることを知っておきましょう。

再加熱カートによって提供直前までの温度管理を行うものの、配膳までの時間や管理体制の不備次第では、提供時の温度や品質が安定しない可能性も考慮しなければなりません。

柔軟性の低下・個別対応の難しさ


外部に委託する場合は、委託先企業が定めた献立が基本となります。献立はあらかじめ設定されており治療食や形態食への対応も可能ですが、あくまでもメーカーの規格に限定されるため、患者の体調や嗜好の変化に必ずしも対応が可能とは限りません

一方、自社でセントラルキッチンを構築する場合、外部への委託と比較して献立、治療食、形態食対応、個別対応など細かい対応への柔軟性は上がります。

緊急時の対応負荷


院外調理システムは日常的な食事提供の効率化を期待できますが、災害や事故といった緊急事態下では、食料の供給と提供に支障をきたす可能性があります。例えば、セントラルキッチンからの配送に遅延が生じた場合、施設内での代替手段が乏しいため、迅速な対応は困難です。

しかしながら、クックフリーズ(完全調理品の冷凍品)方式を採用している場合には、あらかじめ冷凍庫にストックしておくことで、緊急時の備えが可能になります。このように、配送手段や保存体制によっては、リスクを最小限に抑える工夫も実現できます。

誤発注・誤配送


これは外部業者への委託(OEM)の場合のデメリットですが、人が発注・発送するものなので間違いは避けられず、誤発注・ご配送によって間違った食事が届き、またそれが食提供の際に発覚した場合、修正の対応は困難です。

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まとめ


院外調理システムは、厨房業務を外部委託する給食システムです。院外調理システムではセントラルキッチンで調理・保存された食事が配送され、再加熱して提供されます。

院外調理システムの主なメリットは、コスト削減や業務効率化と人手不足解消、衛生管理レベルの向上にあります。一方、配送時間や管理による品質変化や、柔軟性の低下・個別対応の難しさ、緊急時の対応負荷といったデメリットも存在します。

院外調理システムを導入する際には、これらのメリット・デメリットを十分に理解し、検討するようにしましょう。

院外調理システムの導入は、最新トレンドや法規制を考慮することも重要です。当社えだまめには、これらの分野に精通した専門家が在籍しており、貴社の状況に合わせた最適なシステム導入をサポートいたします。もし、より詳しい情報や個別のご相談をご希望でしたら、お気軽にお問い合わせください。

執筆・監修

おいしい冷凍研究所 編集部

株式会社えだまめ