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セントラルキッチンとは?介護施設における導入のメリット・デメリット・検討ポイントを解説

介護施設における食事の提供は、利用者の健康維持やQOL(生活の質)向上に直結する、非常に重要なサービスです。しかし近年では、個別の栄養ニーズへの対応、衛生管理の高度化、慢性的な人手不足や食材費の高騰といった複合的な課題に、現場はますます苦慮しています。

こうした状況のなか、介護施設の課題解決に有効な手段として注目されているのが「セントラルキッチン」の導入です。外部の専用施設で一括調理し、各施設へ配送する仕組みは、衛生面・人材面・コスト面で多くのメリットをもたらす可能性があります。

本記事では、その仕組みや導入メリット、注意すべきポイントを分かりやすく解説します。導入の成功に向けた具体的なステップを把握し、施設運営に最適な形での活用を進めていただくための参考になれば幸いです。

介護施設におけるセントラルキッチン導入の基本


ここでは、介護施設におけるセントラルキッチン導入の基本について以下の2つを解説します。

・セントラルキッチンの定義と役割
・介護施設でセントラルキッチンが注目される背景

セントラルキッチンとは?定義と役割


セントラルキッチンは飲食チェーン店や病院などで調理工程の一部を集約し、厨房業務の効率化と簡易化を図るための施設です。

セントラルキッチンでは食材調達から調理・冷却(冷凍)までを行い、各施設では再加熱・盛り付けを担当します。セントラルキッチンは品質の安定と安全な食事提供が重要な役割で、衛生管理の徹底にも繋がるでしょう。

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介護施設でセントラルキッチンが注目される背景


近年、介護施設でセントラルキッチンの導入が増加しています。背景には人手不足や食材費の値上がりを背景にした委託給食費用の高騰、厨房人員の確保の困難に伴う人件費の高騰などが挙げられます。

セントラルキッチンを導入することで、さまざまな課題を解決できるため、介護施設でもセントラルキッチンの導入を後押ししています。

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介護施設でセントラルキッチンを導入するメリット


介護施設でセントラルキッチンを導入するメリット

介護施設でセントラルキッチンを導入するメリットには、主に以下の3つがあります。

・慢性的な人手不足の解消
・衛生管理のレベルの向上と食中毒リスクの軽減
・食事の個別対応と業務効率化を同時に実現

慢性的な人手不足の解消


多数の施設を運営する介護業界における給食業務では、慢性的な人材不足やコスト増が大きな課題となっています。人手不足を背景に、早朝や休日・祝祭日における人手の確保が非常に困難になってきております。そのような中で管理栄養士が献立作成や栄養管理に加えて調理業務まで担っているケースも多く、専門業務に集中できない状況が続いています。

こうした中、セントラルキッチンの導入は有効な解決策の一つです。調理・冷却(冷凍)などの工程を一括で行い、施設側では再加熱や盛り付けのみを行うため、調理人員の削減や業務の効率化が図れます。作業が標準化されることで、経験の浅いスタッフでも対応しやすくなり、管理栄養士が本来の業務に専念できる環境づくりにもつながります。

自社でセントラルキッチンを設立する場合、大量・集中調理による調理コストの削減、施設厨房における人員配置の削減などにより長期的なコスト削減が可能です。一方で、初期投資の負担やセントラルキッチン業務と施設厨房業務の連携の確立などを確立する必要があります。

そこで、外部の業者から完全調理品を購入するという選択肢もあります。これは初期費用を抑えながらスピーディーに導入できるのがメリットです。

品質や衛生基準を満たした食事を安定的に提供できるため、リスクを最小限に抑えつつ業務改善を進めたい施設には、現実的で効果的な選択肢と言えるでしょう。

衛生管理レベルの向上と食品事故リスクの軽減


介護施設では利用者の健康を考慮し、食事の衛生管理を徹底していくことが重要です。

セントラルキッチンは調理を集約し、衛生管理を徹底することで安全な食事を提供します。また、HACCPに基づいた管理体制を構築することで、食品事故のリスクを大幅に低減できるため、セントラルキッチンの導入は介護施設にとって大きなメリットとなります。

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食事の個別対応と業務効率化を同時に実現


介護施設では入居者が高齢者のため、利用者の咀嚼・嚥下機能や既往歴に応じた、多様な食事形態への対応が求められています。具体的には、普通食に加え、介護食や治療食などの提供が必要です。

しかし、これらをすべて施設内で手作りしようとすると、調理工数がかさむだけでなく、食材費や人件費などのコストも高騰してしまいます。

そこで、セントラルキッチンを活用することで、これらのニーズに効率的かつ安定的に対応することが可能です。自社でセントラルキッチンを構築する場合であれば、調理プロセスを構築した上で、入居者のニーズに合わせたメニューを調整できます。

介護施設でセントラルキッチンを導入する際の注意点


介護施設でセントラルキッチンを導入する際の注意点

介護施設でセントラルキッチンを導入する際には、以下の4つに注意が必要です。

・個別のアレルギーや食事制限への柔軟な対応
・各施設への配送・再加熱における品質管理
・緊急時や災害時の対応策
・初期投資や設備導入にかかるコスト

それぞれの注意点を理解し、適切な状態でセントラルキッチンを導入できるようにしましょう。

個別のアレルギーや食事制限への柔軟な対応


まず、利用者一人ひとりに合わせた食事の提供ができるかどうかを確認しましょう。

介護施設ではアレルギー対応や食事制限など、きめ細やかな配慮が必要です。その点はセントラルキッチンでも柔軟対応は可能ですが、あらかじめ施設側と十分なコミュニケーションを取っておくことでおくことで、よりスムーズな運用を目指せるようにしましょう

各施設への配送・再加熱における品質管理


セントラルキッチン調理の食事品質保持には、施設への輸送や保管、再加熱時の温度・時間管理が重要です。

食事の品質を保つためには、調理後の配送や施設での保管・再加熱といった過程も大切です。配送業者の温度管理の仕組みや、施設での保存方法、再加熱の手順などを共有しながら、安心してご提供できる環境を整えていきましょう。

食品事故など万が一の事態に備えて、検食を保存しておくといった取り組みも必要です。

緊急時や災害時の対応策


さらに、災害時や食材の供給が難しくなったときのことも視野に入れておくと安心です。

セントラルキッチン側の対応体制や保存食の備蓄状況を確認するとともに、施設内でも緊急時に備えた準備をしておくことで、いざという時も落ち着いて対応できます。

また、施設での給食を冷凍対応にすることで、災害時の食事提供のBCP対策として活用することも可能です。

初期投資や設備導入にかかるコスト


導入にかかるコストも大切な検討ポイントです。特に自社でセントラルキッチンを設ける場合は初期費用がかかりますが、長期的に見ると調理効率の向上や厨房人員配置の削減等でコストダウンも期待できるため初期投資の回収も可能です。

一方、外部業者からの調理品を利用すれば初期費用を抑えつつ、必要に応じた設備の整備で導入しやすくなります。施設の運営スタイルに合った方法を選ぶことが大切です。

導入検討時の3つのポイント


セントラルキッチン導入の計画を進めていく上で、以下の4つのポイントを考えることが重要です。

・信頼できるセントラルキッチン業者の選定
・事前の計画とニーズの把握
・セントラルキッチンの設計
・入居者や家族への丁寧な説明と理解

それぞれのポイントを押さえ、適切にセントラルキッチンを導入できるようにしましょう。

①信頼できるセントラルキッチン業者の選定


セントラルキッチンの導入には、信頼できるパートナーの存在が欠かせません。

自社でセントラルキッチンを構築する場合、建築・設計会社や厨房設備メーカー・施工会社との連携が不可欠です。また食材の調達や調理、配送の一部を外部に委託するケースが多いため、各パートナー企業の選定が重要です。

外部の業者に委託する場合は、衛生管理体制やスタッフの健康管理、輸送時の温度管理など、安心して任せられる体制が整っているかを確認することが大切です。製品情報やアレルギー対応の内容も共有しながら、施設のニーズに柔軟に対応してくれるかどうかを見極めましょう。

いずれの場合も、導入支援の実績が豊富な専門家(コンサルティング会社)に相談することで、自施設に合った形を見つけやすくなります。試食会や施設見学、打ち合わせなどを通じて、信頼できるパートナーと丁寧に連携を進めていきましょう。

②事前の計画とニーズの把握


セントラルキッチン導入成功の鍵は、事前準備と施設側のニーズ把握にあります。セントラルキッチンを導入する際には、利用者数や食事ニーズ、厨房設備、人員、コストなど現状分析が不可欠です。

導入前にはセントラルキッチンの担当範囲を明確にし、施設側の作業内容や必要な設備、衛生管理計画を決めます。アレルギーや食事制限への対応、連携体制や責任者間の連絡体制、緊急時対応手順も事前に構築するようにしましょう。

HACCPに基づいた衛生管理を施設側も理解・実践することで、最適なシステム導入と安全な食事提供を実現できます。

③セントラルキッチンの設計


セントラルキッチン・施設厨房それぞれの業務範囲、どのような調理を1日あたり何食調理しなければならないか、冷蔵・冷凍への対応などが事前計画で決まりましたら、それに対応したセントラルキッチンの設計を行わなければなりません。

よくあるお話しですが、実際に出来上がって運営してみると、使い勝手が悪い、作業がやりにくい、導入した機材に不満があるなど設計段階では分からなかった問題が発生することが多くあります。

そうなると、せっかく初期投資をかけても一度作ってしまうと簡単には変更できず、使い勝手が悪い設備を使い続けなければなりません。セントラルキッチンは、「キッチン」という言葉が付いておりますが、一般的な「厨房」とは異なります。厨房メーカーに任せきりにするだけではなく、導入支援の実績が豊富な専門家(コンサルティング会社)に相談することもお勧めします。

入居者や家族への丁寧な説明と理解


セントラルキッチン導入は、食事提供方法の変化に伴い、入居者とそのご家族への丁寧な情報提供と理解が不可欠です。セントラルキッチンの導入前には、品質の安定や衛生管理の徹底、多様な献立の実現といった具体的なメリットを説明し、安心感を与えることが重要です。その際、アレルギー情報や個別の食事制限への対応も明示しましょう。

また、製品情報や試食の機会を設け、食事を具体的にイメージしてもらうことも有効です。スタッフの負担軽減により、利用者とのコミュニケーション時間が増加する可能性も伝えるようにしてください。

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まとめ


セントラルキッチンは調理を集約し、介護施設が直面する多様な食事ニーズへの対応力向上や衛生管理の徹底と食中毒リスクの軽減、食材費や人件費のコスト削減といったメリットをもたらす有効な手段となり得ます。

しかし、導入にあたっては個別のアレルギーや食事制限への柔軟な対応やスタッフの再教育、配送・再加熱における品質管理、緊急時や災害時の対応策、初期コストといった注意点も存在します。導入を成功させるためには、HACCP準拠の信頼できるセントラルキッチン業者の選定や事前の徹底的な計画とニーズの把握、入居者やそのご家族への丁寧な説明と理解を得る努力が重要です。

セントラルキッチンの導入をご検討中の方や、「まずは話だけでも聞いてみたい」という方は、ぜひお気軽に当社えだまめまでご相談ください。現場の状況や課題に合わせた最適なプランをご提案いたします。

執筆・監修

おいしい冷凍研究所 編集部

株式会社えだまめ