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官能評価の最重要ポイント! 評価シートの作り方

官能評価において、評価の結果を記入する評価シートは非常に重要なツールです。評価シートは、パネル(評価をする人)に試料(評価対象物)についての情報を与え、その特徴を定義するものだからです。評価シートの内容によっては、同じテーマの調査を行っても、結果が大きく変わってしまうこともあります。 本記事では、評価シートを作成するうえでの大きな流れを紹介したうえで、特に注意すべき評価用語や尺度用語の選定について説明します。

適切な環境で中立な評価シートを使おう

人の感覚を使った調査である官能評価で精度の高い結果を得るためには、先入観などを排除した適切な言葉や尺度で評価シートを作成しなければなりません。

 
 

評価シートの作成の原則

評価シートの役割は、質問内容を正確にパネル(評価をする人)に伝え、適切に記入してもらうことです。
そのため、シートに記入されている説明文や用語には十分な情報が含まれていなければなりませんが、反対に先入観を与えるような不要な情報は含まれていてはなりません。
 
評価シートを作成するうえで大前提となる要素が『新版 官能検査ハンドブック』(日科技連出版社、1973)にまとめられています。以下のことに留意して作成するようにしましょう。
 
・必要な情報を漏れなく明瞭に与え、不必要な情報は一切与えないこと
・漠然とした表現や感情的な言葉使いしないこと
・質問は回答者によって理解しやすく、誤解を招きやすい言い回しを避けたものであること
・回答者に嫌悪、反感、不安を与えるような質問は避けること
・質問は回答者の教育程度、生活水準、年齢、性別などを十分考慮して作ること
・1つの質問分では1事項のみを聞き、2つ以上のことを聞かないこと
・誘導的あるいは先入観を与えるような質問を避けること
・質問文は記憶を呼び起こしやすいように作ること

 
 

評価シートを設計する方法

ほかにも、評価シートを作成する際には細かな注意点がありますが、大きくは以下の点について検討・決定したうえで設計していくとよいでしょう。
 

分析型か、嗜好型かを決める

官能検査は【関連記事】適切な方法で分析しよう! 食品の官能評価の種類で紹介したように、その目的に沿って分析型と嗜好型に分けられます。
分析型の官能評価には客観性のある質問項目を用い、嗜好型の官能評価には良い悪い、好き嫌いなど個人的な意見が入る項目を用います。分析型か嗜好型かどちらに該当するかが分かりにくいあいまいな項目は避けるようにしましょう。
また、試料(評価対象物)に対する「総合評価(全体を俯瞰した評価)」の欄をつける場合は、パネルが分析的な視点と嗜好的な視点のどちらから判断したか区別が難しいため、注意書きを行って判断を補足する必要があります。
 

適切な試験法を選ぶ

分析型・嗜好型のどちらの調査かを決定したら、適切な評価方法を選択しましょう。
【関連記事】適切な方法で分析しよう! 食品の官能評価の種類で紹介した方法のほか、調査目的に最も合ったものを選択し、評価項目に対する質問を設定していきます。
 

評価項目の選定

① 試料を観察し、色、形、香り、テクスチャー、味、風味などの特徴を大雑把につかみます。
② 評価設計者や数名のパネルで相談しながら、それぞれ思いつくまま項目を挙げ、外観、香り、テクスチャー、味、風味、その他に分類し、誤解のない項目を選び出します。
③ ②の項目を順に並べ、実際に評価を行ってみて、項目の量や質、目的に合致しているかを検討したあと、評価シートを設計します。
 

パネルを決める

パネルの年齢、性別などによって評価項目の数や理解度を調整します。官能評価の経験が多いか少ないかも考慮に入れます。
 

必要があれば付加項目をつける

「香りをたてて味わう(啜る)」「鼻腔を閉じて味のみを味わう(味と風味が混ざらないようにするため)」など、指示を細かく行うと、評価の精度を上げることができます。

 
 

注意したい用語の選び方

加えて、上記の「評価項目の選定」の際に注意して行うべきが、評価用語の検討・選定です。
評価項目に使う用語・尺度に使う用語は、使い方によってはパネルの印象を操作し、結果に影響してしまいます。評価シートの骨組みができた時点で、用いられている用語が適切なものかを検討し、再度見直すことで評価シートの精度を高めていきましょう。
 

評価用語の選定

評価用語の検討方法としては、一例として以下のようなアプローチが挙げられます。ほかにも、それぞれの官能評価の特性に合わせて、適切な方法はないか検討するようにしましょう。
 
①用語を収集する
・実際に評価で使う試料を用いて用語を挙げていく
・グループインタビューを行う
・先行研究や文献を調査して用語を収集する
 
②用語を整理する
・不適当な用語を削除する
・語形を調整する
 
③用語をグループ化する
・用語を挙げたメンバーで討議を行ってグループ化する
・予備実験を行い、得られたデータを解析してグループ化する
 
④最終用語を選定する
・用語の定義やリファレンス(参照)を定めたうえで、用語を挙げたメンバーで合意に達するまで十分に討議を行い、用語に対する認識の統一を図る
 

論文や公的機関の用語を活用する

また、先行研究で既に評価用語が確立している分野や、国際機関の規格内に用語選定の基準が示されていることもあります。
 
たとえば、官能試験について定めている国際規格ISO11035に、用語選定の基準が示されています。
チーズやえだまめ、フランスパンなどについては、海外の研究論文で評価用語の構築が既に行われています。
また、味やにおいに比べて、評価用語の選定が難しいテクスチャー(食感)用語については、『食の官能評価入門』(光生館、2009)26~27頁で用語一覧が作成されているので、参考にするとよいでしょう。
 

尺度用語を使う場合の注意点

また、度合いを示す尺度用語を選定する場合は、「やや好き」と「少し好き」の両方を用いるなど、差が曖昧な用語を使わないように注意する必要があります。
 
以下に9段階尺度の用語の例を示しますので、これを元に評価に適切な尺度用語について検討をしてみるとよいでしょう。
 

9非常に好き/8とても好き/7まあまあ好き/6どちらかといえば好き/5好きでも嫌いでもない/4どちらかといえば嫌い/3嫌い/2とても嫌い/1非常に嫌い
 
9非常に好き/8とても好き/7やや好き/6わずかに好き/5好きでも嫌いでもない/4わずかに嫌い/3やや嫌い/2とても嫌い/1非常に嫌い
 
9最も快い /8かなり快い /7少し快い /6わずかに快い/5快いとも快くないともいえない /4わずかに不愉快である/3少し不愉快である/2かなり不愉快である /1最も不愉快である

大越ひろ・神宮英夫編著『食の官能評価入門』(光生館、2009)を元に作成
 
また、試料の受容性を評価する際には、よく9段階尺度が用いられますが、この場合は、両端の「非常に好き」や「非常に嫌い」の回答が出にくく、極端な試料間の差が検出されにくい点に注意が必要です。

 
 

対象物の特性を知って精度の高い評価シートを作成しよう

ここまで述べたように、精度の高い評価シートを作成にするには、評価対象物そのものや対象物をとりまく環境をよく知り、分析し、検討する作業が欠かせません。
そのプロセスがあってはじめて、目的に沿った調査のための試験法を選択し、適切なパネルを選び、用語をブラッシュアップする作業が行えるのです。
 
精度の高い官能評価の評価シートを作成することは難しいことですが、ていねいに各項目について検討を行うことで、少しでも実態に即した結果が得られるように努力しましょう。

 
 
【参照】
日科技連官能検査委員会編『新版 官能検査ハンドブック』(日科技連出版社、1973)
大越ひろ・神宮英雄編著『食の官能評価入門』(光生館、2009)

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