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味と食感が重要? 冷凍食品の「おいしさ」を考える

「おいしい冷凍食品」を開発しようとした際に、何をもって「おいしい」とすればよいのでしょうか。「おいしさ」は味や食感、香りのほかにも、食べた人の健康状態や食べる環境など、さまざまな要素が影響しており、一概に判断することが難しい指標です。 本記事では、「おいしさ」についての基本的な考え方を説明するとともに、「冷凍食品のおいしさ」を決めるうえでの重要な要素について考えていきます。

冷凍食品の「おいしさ」は何が要因なのか

「おいしい冷凍食品を作りたい」「おいしさを冷凍・解凍後も保ちたい」と考えたとき、私たちはどんな要因にもとづいて「おいしい」と判断しているのでしょうか。
また、食べる環境が変わったり、得ている情報に差があったりする場合も、感じる「おいしさ」は同じなのでしょうか。
 
この記事では、「おいしい」を分解して考え、「おいしい」の定義や「おいしさ」をきめる要因について説明していきます。

 
 

おいしさの定義は何か

美味しさとは何でしょうか。
 
たとえば、「甘い」「苦い」「辛い」という感覚と、「おいしさ」は一致しません。
これは、「甘い」「苦い」「辛い」などの呈味(ていみ:食べ物の味)は、年齢や居住地域、体調などにかかわらず、多くの人が多少の差はあるものの、客観的に感じることができる指標です。
一方、「おいしさ」は感じる人の人生経験やこれまで食べてきたもの、住んでいる土地や時代、体調や気分、空腹度合いなどによって変わってきます。
 
山野善正・山口静子編『おいしさの科学』(朝倉書店、1994)によると、「おいしさ」は、食品を「口腔を通して人間の体内に取り入れられるとき引き起こされる快い感覚」だと定義しています。
 
そのうえで、その「快い感覚」はさまざまな要因が複雑に関与したうえで、総合して決定されるものとして、その要因を大きく以下の3つに分けられています。
 
【おいしさが関与する要因】
・食品の物理的・化学的性質
・食べる側の人間の生理的・心理的状態
・それらをとりまく環境
 
では、この3つは具体的には何を指しているのでしょうか。

 
 

食品の物理的要因と化学的性質

まず、食品がどんな状態かを示している「食品の物理的・化学的性質」についてみていきましょう。
それぞれの性質については、高橋亮・西成勝好「おいしさのぶんせき」ぶんせき2010年8号で、以下のように定義されています。
 

物理的要因

テクスチャー=口腔内で感じる力学特性、コロイド科学特性、かたさ、やわらかさ、粒度感、滑らかさ、のどごし
食品の温度=口から食道で感じる温度
食品の外観=目で感じる見た目
咀嚼嚥下時の発生音=耳で感じる音
 

化学的要因

味(舌で感じる味わい)=基本味(酸味、甘味、塩味、苦味、うま味)、その他の味(辛味,渋味)
芳香=直接鼻で感じるにおい、口に含んで感じるにおい
 
高橋亮・西成勝好「おいしさのぶんせき」ぶんせき2010年8号 を元に作成
 
化学的要因の「味」については、一般的に、味覚は甘味、塩味、酸味、苦み、うま味の基本味と特殊な味を感じることで認知されていると言われています。
 
このなかの「うま味」は19世紀以前では存在が科学的に立証されていませんでしたが、1908年に東京帝国大学教授だった池田菊苗によってうまみ物質であるグルタミン酸が発見され、2000年に舌の味蕾にグルタミン酸受容体があることが証明されたことによって実在が認知されました。現在は、「UMAMI」という日本語で世界的に通用するようになっています。
 
代表的なうま味物質は、アミノ酸系のグルタミン酸ナトリウム(昆布だしのうま味のもと)と核酸系のイノシン酸ナトリウム(かつおぶしのうま味のもと)で、両者を適度に混ぜ合わせると、うま味が数倍に増強される相乗効果が得られることでも知られています。
 
また、特殊味は5つの基本味では説明できない味のことを指し、例としては、柿渋や紅茶に含まれるタンニンによる渋味や、コショウ、トウガラシ、ワサビなどの香辛料(スパイス)の辛味などがあります。

 
 

食品を食べる人の状態と環境要因

「食べる側の人間の生理的・心理的状態」「それらを取り巻く環境」についても、上述の高橋・西成の論文で整理されています。
 

生理的要因

食欲・空腹の度合い
健康状態
アレルギー
不足物質要求
 

心理的要因

感情=喜・怒・哀・楽
その他の心理=ストレス

環境的要因

生まれ育ち=情報・教育、文化・宗教、気候・風土
時間・空間=食事時間、食事空間、朝・昼・夜、季節、気温・湿度
 
高橋亮・西成勝好「おいしさのぶんせき」ぶんせき2010年8号 を元に作成
 
この記事を読んでいらっしゃる皆さんも、経験上、空腹時や楽しい気分のときに食べたものを美味しく感じたり、普段食べなれないものを食べても意味しくないと感じたりした経験があると思います。
暑いときには冷たいもの、寒い時には温かいものがよりおいしく感じたり、ガイドブックで絶賛されている食品を美味しく感じたりするのもこれらの要因によるものです。
 
「おいしさ」という判断要因を分析する際には、食品そのものだけでなく、これら食べた人の状態や環境要因が強く作用していることも踏まえることが必要でしょう。

 
 

美味しさをアップさせるには味とテクスチャーが重要?

美味しさに関与する要因は数多くありますが、その要素は等しく人間の感覚に影響するわけではありません。
 
1971年にSczensniakとKahnによって行われた調査や、1977年に松本と松元によって行われたアンケート調査、2000年に柳本によって行われた出版物内で言及された食品への感覚特性の分類分析調査によって、食べ物のおいしさに対する貢献度は味とテクスチャーが最も大きいという結論が出されています。
 
これらはあくまでも、アンケート調査や主観の入った分類の分析結果なので、科学的実証に基づいたものではありませんが、人が「おいしさ」を感じる傾向をおおまかにつかむための参考になるでしょう。
 
一方で、上述の論文(柳本正勝「食べ物のおいしさに対する各感覚特性の貢献度」日本調理科学学会誌35巻1号)内にも書かれているように、固形食品は味よりもテクスチャーの美味しさへの貢献度が高く、液状食品ではテクスチャーの美味しさへの貢献度が低いなど、食品への各要素の貢献度はさまざまです。同調査では、パンは味よりも外観が重視されているという結果が出ています。

 
 

冷凍した食品の「食感の変化」や「冷凍焼け」には要注意

以上の、「おいしさ」を作る要因から考えると、冷凍した食品は固形食品であるため、解凍した際に「食感の変化」や「冷凍焼け」が起こってしまっている冷凍食品は美味しさに大きな影響が及んでいることがわかります。
【関連記事】乾燥しているサイン!冷凍食品の霜・冷凍焼けを防ぐ方法
 
水分の多い野菜は冷凍すると細胞膜が破壊されて保水能力が失われ、シャキシャキした食感が失われてしまいます。これらの食感の変化は「テクスチャー」の悪化をもたらします。
 
肉や魚も冷凍・保存・解凍方法を誤るとタンパク質変性が起こり、保水能力が失われてドリップが発生するため、食感が変化してしまいます。
 
冷凍焼けによって食品が酸化すると、生と比べ「味」に大きな変化が起こります。
また、冷凍焼けは食品の乾燥を引き起こすため、「テクスチャー」も悪化してしまいます。
 
このように「おいしさとは何か」を考えることは、食品の冷凍・解凍後のおいしさを判断する際のよい指標となることが分かります。

 
 
(参照)
山野善正・山口静子『おいしさの科学』(朝倉出版、1994)
高橋亮・西成勝好「おいしさのぶんせき」ぶんせき2010年8号
柳本正勝「食べ物のおいしさに対する各感覚特性の貢献度」日本調理科学学会誌35巻1号(2002)
Szczesniak,A.S. & Kahn E.L., CONSUMER AWARENESS OF AND ATTITUDES TO FOOD TEXTURE : I: Adults , 2 J.Texture Studies 280,295 (1971)
松本仲子・松元文子「食べ物の味 その評価に関わる要因」調理科学10巻2号(1977)

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