「おいしい冷凍研究所」は急速冷凍の機械選び、コンサルティング、商品開発、マーケティングの情報発信メディアです。

家庭用冷凍庫と業務用冷凍庫、急速冷凍機はどう違う?

家庭用冷凍庫と業務用冷凍庫(ストッカー)、急速冷凍機(フリーザー)は食品の冷凍に欠かせない存在ですが、それぞれどんな違いがあり、どんなことができるのでしょうか?一般的には、家庭用冷凍庫と業務用冷凍庫は「保存」のため、急速冷凍機は冷凍品の「製造」のために使います。本記事ではホームフリージング、長期間の冷凍保存、品質の高い冷凍品になる急速冷凍の観点からそれぞれの特性と違い、正しい使い方について紹介していきます。

家庭用冷凍庫と業務用冷凍庫(ストッカー)は冷凍品の保存に使うもの

家庭用冷凍庫、業務用冷凍庫、急速冷凍機のうち、家庭用冷凍庫と業務用冷凍庫は冷凍品を保存するために使います。
 
家庭用冷凍庫は約マイナス18℃の環境で、食品を保存するために使われます。あくまでも家庭での日常使いのために作られたものなので、容量は小さく、温度設定を調整できるものは限られています。
 
業務用冷凍庫(ストッカー)はマイナス20℃のものからマイナス80℃のもの、もっと低い温度に設定ができるものなど、さまざまです。容量も厨房やキッチンの隅に置ける省スペースのものから、倉庫全体が冷凍庫になっているものまで多様です。
冷凍品を扱う企業は、保存する食品の特性と物量に合わせて温度設定や容量を選択し、食品の保存庫として活用しています。

 
 

冷凍庫では「冷凍」できても「急速冷凍」はできない

冷凍庫内に食品を入れておけば、冷凍された状態になりますが、冷たい空気のなかでじっくり食品が冷やされて凍っていくため、凍るスピードは大変ゆっくりです。この状態で食品が冷凍されることを「緩慢冷凍(緩慢凍結)」と呼びます。
 
緩慢冷凍になった食品の内部では水分がゆっくり凍るため、食品内にできる氷結晶が大きくなってしまい、食品の組織はダメージを受けてしまいます。そのため、高品質な冷凍品を製造するためには不向きといえるでしょう。
【関連記事】急速冷凍がポイント!おいしさをキープする冷凍方法

 
一般社団法人日本冷凍食品協会は、「冷凍食品」の要件の一つとして、食品の品温が30分以内にマイナス5~マイナス1℃の温度帯を通過する「急速凍結」、つまり「急速冷凍」をすることを定めています。
この基準から考えれば、家庭用冷凍庫や業務用冷凍庫で冷凍した食品は「冷凍食品」に当てはまりません。
薄い食品に限って、この基準に当てはまることがありますが、食品の形状が限定されます。

 
 

業務用の超低温冷凍庫は、品質を高く保存するために使われる

それでは、マイナス30〜80℃など、超低温の業務用冷凍庫は、「急速凍結」のためではないのならば、何の目的で使われるのでしょうか。
 
超低温冷凍庫は、主に特定の食品の品質を高く保ったまま保存するために使われています。
冷凍した食品は、食品の温度が下がることによって微生物の増殖と化学変化が抑えられた状態になるので、腐ることはありません。
しかし、家庭用冷凍庫など高い温度で長期間保管を行うと、色や匂い、味が変化してしまうことがあります。
業務用の超低温冷凍庫は低温で保管することで、この食品の変化を防いでいるのです。
 
食品を保管する温度が低温になればなるほど、食品のあらゆる変化が止まり、乾燥、食品の色の変化、酸化などさまざまな食品の劣化を防ぐことができます。
また、低温で保存すれば、冷凍庫の扉の開け閉めなどによる冷凍庫内の温度変化を抑えることができるため、品質に注意が必要で長期間の保存が必要な食品には、低温の業務用冷凍庫が使われます。
 
例えば、マグロはマイナス40℃以上の環境で保存すると、その組織内のミオグロビンが酸化して身が黒っぽくなってしまいます(これを「メト化」と呼びます)。このため、マイナス40℃以下の業務用冷凍庫で保存する必要があります。
一般的に、マグロはメト化防止と保存中の品質保持のためにマイナス50℃以下の環境で保存されます。この環境では、長期間保存したとしてもマグロの品質にほとんど変化がなくなります。このため、低温下で保存されるマグロは1年以上の保存期間を見込んで冷凍庫に入れられ、必要に応じて順次出荷されることが一般的です。

 
 

急速冷凍は急速冷凍機でしか行えない

食品の品質を高く保って冷凍する「急速冷凍」を行うには、「緩慢凍結」しかできない家庭用冷凍庫や業務用冷凍庫では不十分です。
 
食品の品温を速く下げるには、冷凍庫内の空気を冷却するだけでなく、食品の熱を外部に移すための熱伝達係数を上げる必要があります。
熱伝達係数を上げる方法として代表的なものは、風を吹き付けること、液体の流れを発生させること、金属へ接触させることなどです。
 
急速冷凍機は、冷凍庫内の温度を下げるだけでなく、熱伝達係数を上げることができる風や液体の流れ、金属への接触などの機能を併せ持つことで、急速に食品から熱を奪うことができる仕組みになっています。

 
 

正しく活用することで品質を高く保とう

家庭用冷凍庫と業務用冷凍庫、急速冷凍機はこのように、それぞれ用途に合わせた機能を持っています。
それぞれの特性を把握したうえで、正しく活用することで冷凍した食品を品質が高い状態で使えるようにしましょう。
 
家庭用冷凍庫を保存庫として使う場合は、長期間の保存は避け、1か月程度で食品を使い切るようにしましょう。ホームフリージングを行う場合は、急速冷凍ができないことを前提として、冷凍ダメージに強い食品に対して適切な処理をしたうえで冷凍を行いましょう。
 
業務用冷凍庫を保存庫として使う場合は、短期間の保存に使う場合は高めの温度の冷凍庫でも問題ありませんが、長期間の保存に使う場合は低めの温度の冷凍庫を選ぶべきです。
冷凍庫からの食品の出し入れが多い場合は、冷凍庫内の温度が上がりやすいため、目安より低い温度設定の冷凍庫を使ったほうがよいでしょう。
また、マグロのように一定の温度以下でなければ保存中に食品の価値が大幅に下がってしまう変化が起こる食品については、温度設定に気を配る必要があります。
 
急速冷凍機は、食品の温度を速く下げるために特化した機械です。食品を冷凍するために冷凍庫よりも大きな電力を必要とするため、常時保管のために使うことには不適切です。あくまで食品を冷凍するためだけに使い、急速冷凍が完了したら、適切な温度設定の冷凍庫に食品を移して保存しましょう。

関連記事