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風味や栄養価がそのまま残る!フリーズドライの仕組みと特徴

乾燥で食品の香りや栄養をそのまま残す製法


フリーズドライは、冷凍した食品を真空状態に置くことで、水分を昇華させて乾燥させます。食品を軽量にして長期間保存できるうえ、水やお湯で簡単に復元できるので、粥、スープ、即席麺などさまざまな食品にフリーズドライの製法が使われています。

フリーズドライの特徴は、乾燥させるときに加熱をしないため、味や栄養素、香りをそのまま食品に残せることです。そのため、加熱をすると香りが損なわれてしまうコーヒーや紅茶、緑茶などのインスタント製品の製造に適しています。

また、食品の水分を昇華させると、食品内の酵素や微生物の働きを抑制することができるため、添加物を加えることなく長期保存が可能となる点もメリットでしょう。ただし、フリーズドライ加工を行って乾燥した場合でも、食品の酸化は進むため、空気への接触を抑えるための包装は行う必要があります。

フリーズドライ加工では急速冷凍をしてはいけない


フリーズドライ加工をするために、食品を真空機械の中に入れると、食品の周囲の気圧が下がり、低い温度でも水分が沸騰して気化します。

この際に、食品をあらかじめ凍らせておかなければ、食品の形が崩れてしまったり、液体の場合は飛び散ったりしてしまいます。そのため、食品を凍らせてから真空加工を行うのです。中に水分の塊である氷結晶を作った状態で真空加工を行います。

凍らせた食品を真空加工すると、最初に食品内にできた氷結晶の水分が昇華し、その後、食品内に残った氷結晶と氷結晶の間の水分が昇華していきます。そうすると、食品の成分に熱風をあてるなど、加熱することなく乾燥が行えるのです。

このような仕組みで食品の水分を昇華させるため、凍らせた食品内の氷結晶は大きければ大きいほど、水分が空気中に昇華しやすくなり、乾燥をスムーズに行うことができます。そのため、食品を凍らせる際には緩慢冷凍を行うべきで、急速冷凍を行うべきではありません。

ただし、フリーズドライを行う対象の食品によっては、復元性を重視する場合に急速冷凍を行うことがあります。この場合はフリーズドライ加工段階で水分が昇華しづらく、乾燥が難しくなってしまう点に注意が必要です。

どんなものでもフリーズドライにできる


フリーズドライ食品は、食品を冷凍し、真空機械に入れて水分を昇華させれば作ることができるため、基本的にはどんな食品にも応用することができます。

たとえば、ウニをフリーズドライした場合は、水を加えれば、味の復元性がよく形もほぼ元に戻るため、ふりかけやお茶漬けの素の材料に用いられています。ほかにもスイカなどの野菜やフルーツを丸のままフリーズドライにすると、元の形を保ったまま乾燥させることができます。ただし、この場合は水を加えても元の状態には戻りません。

フリーズドライは日常のさまざまな場面に応用されている


これまでに述べたように、フリーズドライにはさまざまなメリットがあることから、食品のフリーズドライ加工は日常生活に広く普及しています。

フリーズドライ製品のメリット


①冷凍し乾燥を行うことで、食品の形状の変化を少なく抑えることができる
②栄養成分や味の変化が少ない状態で保存できる
③氷結晶の水分が昇華した穴が残っており、水や熱湯が浸入しやすく復元しやすい
④水分がほとんど含まれていないため、軽く、輸送性がよい
⑤乾燥しているため、酵素や微生物の働きが抑えられ、長期保存ができる

長期保存ができる点を活かし、保存食として活用される点はもちろん、軽量で栄養素が豊富なうえ、手軽に元の状態に近づけることができる点から、宇宙食にも用いられています。栄養価がそのまま維持でき、食感や風味を復元できることから、素材を裏ごししたうえでフリーズドライ加工した離乳食も多く発売されています。

食品以外では、血液の長距離輸送や生物の精子の保管等に関する研究にもフリーズドライの技術が活用されることがあります。フリーズドライ加工を行うと、冷凍の場合に必要な低温保管施設が必要ないため、災害時など非常時にも保管できる技術として期待をされているのです。

このように、フリーズドライ加工は冷凍保存に比べて保存をする設備を必要としないため、保存性に優れた加工方法といえるでしょう。「生」の状態をそのまま保存できる冷凍保存と、乾燥することで保存性を高めるフリーズドライは同じ冷凍工程を経る加工方法ですが、特徴が大きく違います。

長期保存を行う商品を製造する際にはその両者の特性をよく知ったうえで、適切な商品設計を行えるようにしましょう。