「おいしい冷凍研究所」は急速冷凍の機械選び、コンサルティング、商品開発、マーケティングの情報発信メディアです。

新しい加工で商品価値をアップ! 半割冷凍マンゴーの開発事例

ある食材の冷凍・解凍がうまくいかなかった場合には、チルドや常温での加工とは発想を変えた加工を行うとうまくいく場合があります。本記事では、東京海洋大学教授・鈴木徹氏に開発に携わった半割冷凍マンゴーの事例をご紹介いただきながら、冷凍に適した新しい加工方法を考えるプロセスを解説していただきます。

冷凍技術を使って付加価値の高い商品をつくる

「ある食材の加工食品をより高い価値で販売したい」。この願いは生産者・食品加工業者の皆さんに共通するものでしょう。実際に私の元にも、「冷凍を通じて付加価値を高められないか」というご相談が多く寄せられます。
 
この記事では、私が携わった半割冷凍マンゴーの開発事例を通じて、冷凍技術を活用した商品の付加価値を開発するプロセスを紹介していきたいと思います。

 
 

どこがゴール?まずは目的を整理する

まずは、なぜマンゴーの商品開発を手掛けたかについて説明しましょう。
 
国産マンゴーは贈答品として比較的高い価格で取引されており、完全に熟するまで収穫を待って出荷する「完熟マンゴー」にすることで、さらに価値が上がるフルーツです。
しかし、完熟状態になってからは日持ちがしないというデメリットがあるため、冷凍技術を活かして完熟マンゴーの流通を促進したり、廃棄ロスをなくしたりすることが求められていました。
 
しかし、完熟状態のマンゴーをまるごと冷凍するだけではうまくいきません。販売や消費の現場で解凍するときに、実の食感がかなり柔らかくなってしまい、色も悪くなってしまいます。

 
 

カットマンゴーではダメ?既存商品の問題点を確認する

一方でカットした状態のマンゴーの冷凍品であれば色や食感は問題なく、既に実用化され普及しています。この技術を完熟マンゴーに応用することはできないのでしょうか。
 
カットマンゴーの冷凍品は、自然解凍してもある程度食感を維持でき、おいしく食べられるものの、安価に見えてしまいます。
また、解凍して盛り付けた際にも、丸のままの状態に比べてフレッシュな印象が薄れてしまいます。
 
冷凍カットマンゴーの生産・保存工程にも問題がありました。カットマンゴーを冷凍して袋詰めしたり、保管している最中にマンゴーとマンゴーがぶつかりあったり、容器にぶつかったりして角が削れてしまい、見た目が悪くなってしまうのです。
 
これらの課題を改善するには、できる限り丸のままに近い状態でマンゴーを加工し冷凍する必要がありそうです。

 
 

マンゴーを冷凍する際に必要な工程は?

まずは、品質を落とさず冷凍するために必要な加工は何かを検討します。
 
丸のまま冷凍した際の問題点の一つは、実が柔らかくなり食感が落ちてしまうことでした。これを防ぐには、冷凍時に発生しマンゴーの組織にダメージを与えてしまう氷結晶をできるだけ小さくすることが求められます。
 
氷結晶を小さくするためには、いくつか方法があります。
まずは速いスピードで冷凍すること。そのためには急速冷凍を行うほか、マンゴーの厚さをできる限り薄い状態にすることが求められます。
加えて、効果的な方法が脱水処理です。食品の水分を減らすことで氷結晶に集まってくる水分を少なくすることができます。
 
もう一つの問題点であるマンゴーの色の変化を防ぐためには、解凍時の酵素反応を抑える必要があります。
これについても、氷結晶を小さくしておけば、マンゴーの組織ダメージによる酵素反応の促進を抑えることができるため、変色が少ない状態で解凍することが可能になります。

 
 

果物としての価値を落とさず凍結の効果を上げるには

これまで述べてきたように、脱水処理を行うことができ、かつマンゴーを薄い状態にして、商品価値を落とさない形状で冷凍する方法はないでしょうか。
 
そこで考えついたのが、マンゴーを半割にしたうえで切れ目を入れて凍結する方法です。
 
この方法であれば、マンゴーを薄く半割にしてあるので、丸のままの状態よりも速く凍結できます。
また、果実が露出した状態で切れ目を入れているので、冷凍前の脱水も容易に行うことができます。
 
そして何より重要な点は、皮がついたままの加工前の雰囲気を残して冷凍できることです。
この形で一度冷凍・解凍した半割マンゴーは、氷結晶を小さく抑えたことで、食感も失われておらず、色の変化も少なくなっています。
また、バラ凍結を行っていないため角が削れておらず、見た目の美しさも損なわれていません。
 
この形状であれば、冷凍した状態のものを贈答品として活用しやすいでしょう。
 
また、店舗などで解凍して提供する場合は、常温で解凍してもさほど品質に劣化はありません。
食べごろのものを長期保管しておけるうえに、あらかじめ切れ目が入っているため、「花咲カット」にするために包丁を使う必要もありません。食べごろの生のマンゴーと変わらない価値を手軽に提供できるのです。

 
 

冷凍商品の価値を上げるには、現状と要件の整理が必要

冷凍商品の価値を高めるための開発には、現状と冷凍技術に基づいた要件を整理し、適切な方法を探っていくことが欠かせません。
 
冷凍技術はまだ万能ではなく、食品の特性や形状は多岐にわたるため、一つひとつの食品について詳細な検証する必要があります。
 
最近では、同様の考え方を通じて、これまでむき身で冷凍され、安価で流通していた牡蠣を、殻付きの状態で冷凍し、価格の高い商品として開発することを実現しました。
 
現状を冷凍技術で打開したいと感じている方は、まずは何を達成すれば目標に到達できるかを整理し、答えを探っていくとよいでしょう。

関連記事